ちろる

さびしんぼうのちろるのレビュー・感想・評価

さびしんぼう(1985年製作の映画)
3.9
大林監督、尾道でしか出せないノスタルジーが憎らしいほどに。
ショパンの「別れの曲」に想いを込めて、誰がが誰かを片想いする、そんな清らかな瞬間たちを切り取ったみずみずしい尾道三部ラストの青春ファンタジー。
尾美としのりさんがここまでロマンチストな役なのを初めて拝見したので、始まりのポエトリーはちょっと聞いてる方が恥ずかった。けど悪ガキの表面の顔とロマンチストな内面との使い分けの具合がだんだんと心地よくて、慣れてくる頃にはポエムをもっと欲しがっている私がいた。
無口な父親とガミガミ言う母親。
父の発しない言葉の代わりはいつも木魚なのだけど、木魚がだんだんメトロノームになる。
別れの歌とお経のコラボはちゃんとラストに繋がっていくのだ。

ファインダーの中でかくれんぼしてるピアノを弾く美少女さびしんぼう。そしてちょっとおかしなピエロみたいなさびしんぼう。
2人のさびしんぼうを演じた富田靖子さんの透明感にはとにかくうっとりさせられる。
富田靖子さんは寂しくて不幸な役どころが似合うわけだけど、この2人のさびしんぼうが内に秘めた「寂しさ」がちゃんと分離してそれぞれが彼女の瞳で演じられていたのが素晴らしかった。
ちなみにロマンティックな作品だけど、ところどころコミカルなシーンもちゃんとある。
おうむのシーンとか、、、
いつもスカート脱げちゃう英語教師とか、、くだらないけどこういうおふざけ好きなんだなぁ(笑)
こんな風に切ない青春と、深い家族愛を尾道の美しい夕焼けの風景にぴったりとはめ込んで、この時代にしか描けない極上の叙情詩的ファンタジーに仕上がっていました。
ちろる

ちろる