スガシュウヘイ

ミクロの決死圏のスガシュウヘイのネタバレレビュー・内容・結末

ミクロの決死圏(1966年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

「ミクロ化した人間が人体の中へ入り込み、手術を施し、脱出する。」という映画です。


ミクロ化するのに、なぜか2段階の工程を踏んでいます。

こんなちまちました地味な部分に時間を割かないで、とっとと人体に侵入すればいいのに、と思ってしまいましたが、何だかそのクソ真面目さに、少し笑ってしまいました。


さぁいざ血液に侵入すると、なぜか背景は無色透明。

それもそのはず。
血液が赤く見えるのは、赤血球のヘモグロビンのせいなんですよね。それ以外の部分は血しょうという無色の液体。忘れていましたが、確か学生時代に勉強しました。


血しょうの中に浮かぶ、いくつもの鮮やかな赤血球を見て、乗組員がつぶやきます。

「哲学者が言ったとおり、人間は宇宙の中心だ。マクロの世界とミクロの世界の中間にいる。そのどちらも無限だ。」


序盤のこの展開に、すでに少し感動してしまいました。どうやらこの映画は、単なるアイデア一発勝負の映画ではなさそうです。


その後、船はお約束通りトラブルに遭い、本来の針路を外れていきます。

動脈から、静脈へ、
心臓から肺へ、
内耳から脳へ。


「宇宙の闇を照らすすべての恒星も、思考の閃きに比べれば光が弱い」

脳内シナプスの電気信号を背景に、またも乗組員が詩的なことをつぶやきます。ここの乗組員はなんだか詩人が多い。



人体のなかにある宇宙。
ミクロとマクロがつながっていく壮大な思想。

宇宙の果てのことは誰にもわかりませんが、人体の原子の中の中の中に何があるのかも、同じようにわからない。


昔、化学の時間に、原子のまわりを電子が飛んでいる映像を見ました。水素原子には1つ、ヘリウム原子には2つの電子が飛んでいる(確か)。その時、「あー、何だか惑星と衛星みたいだな」、と思った事を今でも覚えています。


そんな事を考えているうちに、手術は無事に終わり、あとは最大の敵「白血球」から逃げるのみ。

タイムリミットが迫ります。


製作:1966年(米)
原題:FANTASTIC VOYAGE
監督:リチャード・フライシャー
出演:スティーヴン・ボイド、ラクエル・ウェルチ