えむえすぷらす

きみへの距離、1万キロのえむえすぷらすのレビュー・感想・評価

きみへの距離、1万キロ(2017年製作の映画)
4.0
デトロイトでドローンを使ったリモート警備会社の夜勤警備員を勤める主人公と大西洋を越えて北アフリカで原油パイプラインが砂礫の砂漠を横断しているところにある町で銀行の出張所窓口係(実際のところ地下銀行に見える)を務めている若い女性の物語。

彼女には給水車の運転手を務めている彼氏がいたが、親の決めた相手(中年)との結婚を迫られたため、密航船で欧州へ行く事を計画する。その前から彼女が気になって六脚歩行ドローンを使って見守っていた主人公は彼らの密航を助けようとする。

脚本はシンプル。出てくる場所も限られている。遠く離れたアメリカから最初はピーピング・トム状態の主人公。途中からはシラノ・ド・ベルジュラック状態になる。そしてある事で彼氏が事故死してからはもっと深く関わる事になる。

この作品、人の機微が描き切れていない。
主人公の上司は何故か主人公の暴走を止めずに黙認する。
ヒロインは何故か主人公のある頼みについて受け入れていて都合のいい女になってしまっている。何故主人公はあんなに肩入れするのかという疑問を持っていない。
なので最後のシークエンスがつまらないものになってしまっている。

尺と予算の問題だろうと思いますが、一度は突き放さすべきだったのではないか。この点でもう一歩描き切れなかったことが惜しまれる。

「君の名は。」実写版はこんな感じになるかもという所がある。あの作品は主人公二人の主観で物事を見せていてあの世界の物理法則は伏せられている。瀧の意思は不思議な確信に満ちている。説明がつかない所なんですが不思議に見えないようにできている。ごまかしなのか隠しているのか分かりませんがバランスは絶妙。お陰でエピローグのシンクロした見せ方と奇怪な二人の移動ルートは普通気にしないように出来ている。