はる

ターミネーター ニュー・フェイトのはるのレビュー・感想・評価

4.3
T3〜5を無かったことにした今作は、続編でありながらも原点に帰るような仕上がりになった。リンダ・ハミルトンとシュワルツェネッガーの共演というだけでなく、マッケンジー・デイヴィス演じるグレースの存在も大事な要素。ダニーには新しい役柄が与えられてただの焼き直しではない。その上で面白いのはT-800の成り行きで、このアイデアが秀逸だったと思う。その周りのところで歪みが出たのかもしれないけど。

ネタバレ抜きは無理なので早速。
『ターミネーター』『T2』では未来から送られてきた存在は死ぬか破壊されるか消滅した。それが今作で初めて「任務を達成したT-800のその後」が示された。もとよりT-800は任務のために冷徹であったが「ジョン・コナーを抹殺する」という任務以外には関心が無い。その上で過去社会に適応できるだけのAIを有しているアンドロイド、そのT-800があのようになってしまうのはなるほどなと感じた。同居していた親子は何かを感じていたはずだが犯罪者くらいには察していただろう。この辺りは西部劇のようである。「カール」という名前を得たことをはじめ「彼」が人間社会の中で獲得したもののことは今作で重要な要素だと思う。T-800は平和な社会ではそうなるし、戦時であれば恐ろしい存在になるということだ。それをどう受け止めて、現代のAIの進展について考えるのか。そう書かれてもいるだろう。この辺りがキャメロン印なのかな。
「スカイネット」は作られた時点での世界情勢を反映して核戦争を起こした。今回の「リージョン」はネットを駆使し、監視網を最大限に生かしている。AIについてもそうだが、現代の脅威を反映した存在に見える。「スカイネット」と言いながら本格的なネット社会を実は知らないし。

今作でのシュワルツェネッガーは引き立て役として見事だったと思う。サラとダニーの関係を繋ぐことになるグレース、という三角関係が良かったので、そこを邪魔しないで見守る役というのは、これも西部劇の流れ者のようだ。カイルがそうであったように、未来から送られてくる戦士のドラマもこのターミネーター物語のキモだし、それを女性同士という設定にしたことも良い。グレースは志願したはずで、ラストではダニーが「もう死なせない」と言っているので、やはり「リージョン」の開発を阻止するためにサラと戦うことになるのだろう。

幹になっている事柄がとても気に入っているので、ある程度のご都合主義は気にならない。グレースは強化人間というか全然サイボーグだったり、その弱点の設定などもちゃんと説明があって良かった。T-800といいこういう新味もある今作は本当によくできているなと思う。
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