スキピオ

ターミネーター ニュー・フェイトのスキピオのレビュー・感想・評価

4.0
<運命は変えられる/変えられない というジレンマ>

有名作品の中で何度もリブートされ、失敗し、最も不幸なシリーズと思っていたし、もういいかなって感じだったけどまぁ、正統続編なので。

ジェームズキャメロン製作復帰作だけあって、救世主と聖母マリア、どこまでも追ってくるターミネーター、時空を超えてやってくる謎の強力助っ人、ド派手なカーチェイス、あくまで一対少人数の闘い、というシリーズとして絶対必要なポイントは「しっかり」押さえていた。大型トレーラーを使った重みのあるカーチェイスはさすがだったねー。

それでいて時代に合わせて韻を踏むように要素の進化やスライドも行なっていて、さすが「(シリーズを理解している)生みの親」という感じだった。正統続編も何も、大人気「T2の時のT800」はいないけどどうすんだ?に対するやり方も最後まで観て、同等のエモーションまでもっていかれ、納得。

ただ「生みの親」の心変わりによる、正統続編の前に無かったことにされ屍のように捨てられた3、4、5の3作も無茶な続編プランの中で頑張っていたし、不憫で仕方ない。(新起動なんてちゃんと制作陣がジェームズ・キャメロンに敬意を持って相談しに行ってたよね。)それぞれで嫌いになれないポイントもあるので「今作の出来とは関係なくモヤッとする」のも事実。

微妙な点ももちろんある。リンダハミルトンの復帰による絵力の強さはあるものの(彼女がつまらない女同士のキャットファイト的だった脚本をだいぶ直させたらしく、功績は計り知れないね。)、今作も女性ターミネーター的なキャラや液体金属ターミネーターなどの既に何度か使われたアイデアの域から出ていないし。元も子もないが本質的にストーリーでやっていることは同じことの繰り返し、大して新しいことをしていたわけじゃないし。

今回珠玉の大活躍をしたマッケンジー・デイヴィスも、シュワちゃんも、次に出すの難しくしちゃうし、どうすんだ?キャラクターを一作一作積み重ねていかないとサーガ(大河ドラマ)は生まれないぞ。あと作劇上の「エッジ」をつけるために仕方ないという理屈はわかるけど、「シリーズの超重要人物」の冒頭での扱いにも感情的に納得できなかった。

「運命は変えられる」というテーマのはずがどんどん続けられるシリーズのせいでむしろ「運命は変えられない」という真理を証明する代名詞のような作品シリーズになってしまっているのが残念。

最も「いくらでも続けられるシリーズ」なんだけど、(続けることによって悲劇が繰り返されるだけで)最も続けちゃいけないシリーズなのよね。それをやってしまっていてなおかつ「まだ」続くそうなので、良作としての点数に入っているけど0点にしたい気持ちも。