しみじみと沁みました。総菜店を営む母と就職がうまく行かない息子。ふたりはぎこちない関係。だけど母の認知症が発覚し、その関係が動き出す。繋ぐのは母の料理。あんな総菜店、近所に欲しい。韓国料理を作ったり、食べたくもなりました。
家族×料理という普遍的なテーマの作品。監督自身の経験を元にしたお話だそう。とにかく母が作る料理がいちいちおいしそうでたまらない。作品を彩る。そして母が編み出したレシピにはちゃんと理由があって、家庭料理を作る人ならうなずくはず。パンフレットは劇中の母の料理のレシピ付き。
シングルマザーの母が総菜店を営むのは、生活のため、こどもたちを育てるため。同時に料理を作るのは彼女にとって大切なことだったという部分が描かれてるのが好き。母の美意識を感じる店構え。食べる人を思いやったレシピ。季節や自然を取り入れた美しい料理。店員のヨンジャさんとの絆。
愛情表現が下手な母と息子。でも家族だからこそ明かせなかったりすることはあるから、わかるなあって感じでした。そして母が認知症になった時の息子の戸惑いも丁寧に描かれていた。どう介護したらいいのか、母の尊厳、お金の問題、介護の担い手などなど。いろんな課題が一気に押し寄せる。
母のイ・ジュシル(이주실)さん、すばらしかった。息子にも言えぬ過去を抱え、「忘れたいことは忘れないのに、忘れてはいけないことを思い出せない」と嘆く(涙)。息子のイ・ジョンヒョク(이종혁)さん、嫁のキム・ソンウン(김성은)さん、盟友のキム・サンファ(김선화)さんも適役。