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アイ・キャン・スピークのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

アイ・キャン・スピーク(2017年製作の映画)
3.8
大好きなイジェフンやヨムヘランが出てる作品。
前半は地元のクレーマーお婆さんと区役所職員のスッタモンダが軽快に描かれていますが、後半は従軍慰安婦であった辛い過去についてのお話になっていき、トーンが変わります。

クセの強いお婆さんが直向きに英語を勉強する姿や、偏屈のようでいて情にあつい優しい一面もあり、だんだんお婆さんの事が好きになっていきます。
そのお婆さんにひょんなことから英語を教えるはめになった区役所職員のミンジェとの交流で、互いに温かみを感じて家族のようになっていくのが、ほのぼのとしてて良かったし、お婆さんがこの歳で英語を必死で勉強する理由が分かると、お婆さんがこの事に人生をかけてる重みを感じました。

以前、従軍慰安婦論争についてのドキュメンタリー「主戦場」を見ましたが、その中で、従軍慰安婦だった事を打ち明けられない女性がたくさんいるのは、家父長制や女性蔑視が根強い事に原因がある、という論がありました。
従軍慰安婦だった女性は被害者なのに、その事を同じ韓国人からも責められるということを知って、とても悲しい気持ちになったし、誰にも言えず、ひとりで心に大きな傷を負いながら生きてきたハルモニ達の苦しみを思うととても胸が痛かったです。
でも、本作では、お婆さんの勇気ある行動やつらい過去に連帯する人たちが描かれていて良かったです。

さらに、「主戦場」でも従軍慰安婦への謝罪や補償などを求めたアメリカの議会で、日本の右翼たちが、元慰安婦のお婆さん達に向かって「嘘つきだ」「売春婦だ」などと貶める暴言を吐いてた事実も映されていましたが、本作でもそれと同じ下劣な日本人が出てきて、心底恥ずかしく情けない気持ちになりました。(日本人をことさら悪く描いているのではなく、実際にあのような言動の人がたくさんいたから描かれているだけです。あの日本人の描き方にムキーっとなるよりも、あのような日本人にこそ怒るべきかと。)

いろんな論争もありますが、事実を認めずに正当化したり、あるいは無かったことにしたり、相手を貶めたりするのは、過去から目を背けて反省もせずに醜悪だし、過去の過ちを繰り返すことにも繋がります。
誠実に対応して、もう二度と繰り返さないためにも、こういった歴史をいつまでも語り継いでいくくらいの事をしていかないといけないと思います。

「I can speak」のタイトルも、お婆さんの思いを知ると、とても誇らしく重みのある言葉で感動しました。
日本の過去の過ちを他国が(特に韓国や中国が)描くと、すぐに反射的に「反日だ!」と言う人がいますが、まずは何があったのかをちゃんと知って認めるためにも、こういう作品を見て欲しいと思いました。

テーマ的に重みのある話ではありますが、ハートウォーミングなヒューマンドラマなので、とても見やすく良かったです。
たくさん英語のセリフが出てきて、イジェフンや特にハルモニ役のナムニさんはきっと大変だったんじゃないかなと思います。
私の大好きなヨムヘランさんも、そんなにたくさん出番があるわけでもないけど、さすがの存在感でした。

ナムニ 6作品目
イジェフン 7作品目
パクチョルミン 7作品目
ヨムヘラン 23作品目
イデヨン 13作品目

12
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