みんと

運命は踊るのみんとのレビュー・感想・評価

運命は踊る(2017年製作の映画)
4.0
コレは独特だけど嫌いじゃない。
むしろ好き!

イスラエル映画と言えばほっこり感動作のイメージが強かった。『靴ひも』とか『旅立つ息子へ』とか…
コレは違う。もっと言えば今まで観たことの無い世界観だった。

運命こそが最大のミステリー、残酷な誤報が家族の運命を翻弄する…
キャッチコピーが鋭く的を射てる。

夫婦の元に届いた息子ヨナタンの戦死の知らせ。ショックのあまり気を失う母と役人の対応に苛立ちを覚える父。そんな中、戦死の報が誤りだったとわかる…

ラクダが通る検問所、戦場でありながら仲間の兵士達とどこか間延びした時間を過ごしていた息子。遠く離れた地で暮らす父、母。2つの隔たる場所で運命が交錯する演出が秀逸。

上からのカットを多用しゆっくりとしたカメラワークで映し出す不似合いとも思えるスタイリッシュな映像。両親宅の長い廊下、広々とした室内の家具や調度品のディテールへの拘り。
なんだ!このセンスは!

ドラマティックに心を揺さぶる音楽に身を委ねたかと思うと突然のポップな音楽にハッとする。攻めたアニメの挿入、遊び心すら感じるシュールな演出の散りばめは斬新で新鮮。

日に日に傾くコンテナのメタファーを筆頭に映像に語らせる系の作品に違いないのだけど。

戦争映画の括りで見ると、コレもひとつの側面であり不条理を突きつけられる。
また、人間心理の部分では鋭い視点だし当然抉られる感覚もある。巧妙な構成の中に“不思議“のエッセンスの塩梅も絶妙…

絶望的と言い切れないものの希望の部分でモヤッと掴みどころがない感じは狙いなのか、汲み取れてないのか…


原題フォックストロット(ダンス曲のひとつ)のステップのように、まさに『運命は踊る』!

好みの別れる作品だと思う。
みんと

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