マクガフィン

運命は踊るのマクガフィンのレビュー・感想・評価

運命は踊る(2017年製作の映画)
4.2
運命の皮肉は、帳尻合わせのような因果応報。その皮肉を、シュールなコミカルさで、イスラエルの現状を皮肉る演出はセンス抜群に。登場人物たちの行く先々を暗雲させる手法は秀逸で、先の見えない展開に興味深々。

序盤よりBGMを排除した会話は、北欧映画を髣髴するような独自な雰囲気で、無機質なモダン建築の背景も味を加える。息子の戦死をめぐる両親の感情的な挿話から、テイストが一転する息子のダンスシーンへの切り替えが効果的で、アクセントにも。

〈イスラエル社会〉をメタ的にした日に日に傾くコンテナ。〈生〉をメタ的にしたダンスやエロ本〈無意義〉をメタ的にしたラクダ。最初と最後の車シーン。軍の統制を批判する父親とミスを揉み消す息子の対比、挿話や伏線やアイテムを挟んで、そのバランスを傾けることと逸脱する手法に感心し、意図的に拮抗しない所がミソに。

戦死したと告げられた息子が誤報で生きていた安堵は、同郷人が死んだことは変わらなく、それを身勝手や他人事とみなすかの、人倫的モラルの答えが見つからないような揺さぶりは、レバノンの戦争によるトラウマと現状を表すように。スクエアを描くようなステップが起点へと戻ることが、メタ的な繰り返す運命やトラウマや戦争の代償を引き続くことが何とも言えない。

伏線や、行間や、何やらが痛烈なまでに刺さり相性抜群に。社会の縮図を描きつつも、根底では繋がる人間の各々の在り方の重要性が切に伝わることが考え深い。