いののん

運命は踊るのいののんのレビュー・感想・評価

運命は踊る(2017年製作の映画)
4.3
もしもこの映画を自宅で観ていたなら、多分私は爆睡して、「全然わかんなかった」というナメたレビューを書いて、3.0とか2.8とかの点数をつけていたと思う。ごめんなさい、私はそんなダメなヤツなんだ。


映画も途中までは、仕事帰りじゃないのにウトウトしてしまって、でも第2パート(第3パートまである)の途中からのめり込み、これは、もしかしたら大傑作なのかもと、思い始めた。


息苦しい第1部。凝った部屋、いかにもインテリっぽい絵画や床のデザインや、マイケル・ダグラスそっくりなお父さんの大物ちっくな感じや、かっちょいいカメラワークや、そこに入り込む負の感情とかが、なんとも不気味でもあり、みないようにしようと無意識に思ったのかもしれない。


あのダンスは、「戦場でワルツを」と繋がっているのだろうか。そんなことが頭をよぎる、第2部。ラクダが検問所をゆる~く横切る。
4人の若者。イスラエルの国境地帯を舞台としながら、これは舞台がどこであったとしても、全く違和感がない。アラブの話であったとしても、アジアの話であったとしても、はたまた、宇宙船ダーク・スター号のなかの話であったとしても、全く不思議じゃない。ちょっとヘンテコで、なんともいえないおかしみがあって、斜め45度くらいズレてて、その角度がどんどん鋭くなって、傾いていって、いつ崩壊しても、いつ突発的に何かがおこっても、まったくおかしくない。そんな状況だと思えてくる。
ゆるさは突然、殺気に変わるかもしれない。孤独は自己と他者を追い込むかもしれない。痛みや、悲しみが、浮き彫りになっていく。戦争で負った感情。忘れ得ぬ感情。喪失の果て。縦の糸があなたで、横の糸が私で、織りなす布がいつか誰かの傷をかばうものであったらいいと思う。(ごめんなさい、引用しました)
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