運命は踊るの作品情報・感想・評価

「運命は踊る」に投稿された感想・評価

軍に属する息子が死んだと夫婦の元に報告が届くところから物語ははじまる。気を失う妻、哀しみに荒れ狂う夫。しかしその死は同姓同名の他人で……。このワンテーマだけで描いていれば大傑作になった感があるのだが、いくつか屋上屋を重ねたことで薄まってしまった。不条理感は増したが
運命の皮肉は、帳尻合わせのような因果応報。その皮肉を、シュールなコミカルさで、イスラエルの現状を皮肉る演出はセンス抜群に。登場人物たちの行く先々を暗雲させる手法は秀逸で、先の見えない展開に興味深々。

序盤よりBGMを排除した会話は、北欧映画を髣髴するような独自な雰囲気で、無機質なモダン建築の背景も味を加える。息子の戦死をめぐる両親の感情的な挿話から、テイストが一転する息子のダンスシーンへの切り替えが効果的で、アクセントにも。

〈イスラエル社会〉をメタ的にした日に日に傾くコンテナ。〈生〉をメタ的にしたダンスやエロ本〈無意義〉をメタ的にしたラクダ。最初と最後の車シーン。軍の統制を批判する父親と、ミスを揉み消す息子の対比、挿話や伏線やアイテムを挟んで、そのバランスを傾けることと逸脱する手法に感心し、意図的に拮抗しない所がミソに。

戦死したと告げられた息子が誤報で、生きていた安堵は、同郷人が死んだことは変わらなく、それを身勝手や他人事とみなすかの、人倫的モラルの答えが見つからないような揺さぶりは、レバノンの戦争によるトラウマと現状を表すように。スクエアを描くようなステップが起点へと戻ることが、メタ的な繰り返す運命や、トラウマや戦争の代償を引き続くことが何とも言えない。

伏線や、行間や、何やらが痛烈なまでに刺さり、相性抜群に。社会の縮図を描きつつも、根底では繋がる人間の各々の在り方の重要性が切に伝わることが考え深い。
Tune

Tuneの感想・評価

4.4
作り手のこだわりをひしひしと感じる独特のカメラワークと画作り、作品全体にしっかりと貫かれたFoxtrotのメッセージ性。
邦題である『運命は踊る』の「踊る」とは劇中数回出てきたFoxtrot(アメリカンスタイル社交ダンスの一種)のこと。前右後ろ左前...とどうあがいても元の場所に戻ってくるステップは運命の皮肉であり人生の皮肉である。
悲痛でもあり愉快でもあった。
傑作です。
pepo

pepoの感想・評価

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「運命は踊る」
父の“弱さ”の源泉は、世代を越えて引き継がれた「時代に虐げられた記憶」で、当人にはどうしようもなかった因果の巡る不条理がキツい。
それでも最初から最後まで見入ってしまうのは、話の組み立ての巧みさ、時に軽妙な話運び、そして何よりこの監督の撮る画面構成の美しさがあったからだと思う。
必要かつ充分なものがあるべき所に配されていて、それがドラマの理解に深く寄与してくる感じ。単なる美意識上の計算、みたいなものじゃなくもっと広い知性に裏打ちされてる気がして、私はヴィルヌーヴ監督と同じくらいこの監督の撮る画面が好きかも...
予告に入ってる「兵士のダンス」のシーンが気になって足を運んだんだけど、観て良かった

このレビューはネタバレを含みます

人の運命とは何かを描こうとしているけど偶然ではなく宿命論的な展開になっていて予測は出来てしまう。選択肢の乏しさ、エキセントリックな登場人物。両親の家と遠く離れた検問所の出来事は予測が出来てしまう。

偶然から奪われる物語は「人生はシネマティック」の方が遥かに成功している。個人的には本作よりもこちらを強くお勧めしたい気分になった。
珍しいイスラエル映画。戦死を伝えられた家族が、実は誤報で息子は生きてましたの知らせに混乱するのは当然。

息子は検問所で悶々とした時間を過ごしていた。そしてある晩、車に乗り合わせた若者たちを誤って殺してしまう。

その息子は検問所から家に帰る途中で事故に遭い…。

まさにタイトル通りの展開でしたが、静かな作品のため最後まで眠気との闘いであった。

2018年封切映画 44本目
chip

chipの感想・評価

3.8
初めて観るイスラエルの映画。

長回しとか、カメラワークとか、
全くわからない私ですけど…

これは今まで観たことがない感じ。
天井から真下に見下ろすように撮っている、緊張感がハンパない。

兵士である息子が派遣されているのは、荒涼とした土地にポツンとある検問所。
毎日何も起こらない静かなところ。
息子は趣味である絵を披露するが…
意味深げで、味のある絵だった。
同僚の兵士が踊るマンボが、キレッキレ!「フォックストロット」のステップだった。
フォックストロット、これが原題。
前へ、右へ、後ろへ、左へ。
結局元に戻る…運命も。
鰯

鰯の感想・評価

4.1
ラクダと、必ず元の場所へと戻るステップ

シリアスなポスターと突然マンボの流れる不思議な予告につられて鑑賞。
ミステリー映画としても観られるし、戦争映画としても観られる。家族映画でもあって、コメディとしても観られる。ジャンルを聞かれてもうまく答えられません。観た後にいえるのは、「この邦題はよかったなあ」ということ。

オープニングの車の上から撮った風景。ここはどこで誰が載っているのだろう。夫婦の暮らす家に突然訪れた軍の役人に告げられる従軍している息子の死。父ミハエルは受け入れられないながらも葬儀の手配などを始める。そこで、再度現れた軍の役人に告げられるのは「息子が生きていた」という事実。何が起こっているのか。息子は無事なのか。家族は1つになることができるのか。父はなぜこんなにも強情な態度をとるのか。3幕構成の3幕めできちんと明かされる。

どんぱちはなくても、常に緊張感のある世界。息子のヨナタンは、だだっ広い荒野の検問所で仲間と通行者を検査する日々を送っていた。友人が銃を抱えて踊るフォックストロットのステップ。彼らの生活環境が徐々に悪化する中で起こるある事件と上官の対応には、銃撃戦よりも強い恐怖を抱きました。そして何だかあっけない幕切れ

息子に関する報告に動転する父と混乱しながらも気丈であろうとする母ダフナ。そして父の話を思い出す息子。3人が家族のことを思いながら、見事にそれぞれの想いはかみ合わない。そこから徐々に父の本来の姿が明かされると色々合点がいき始める。「ああ、この父を中心にみんなグルグルと同じところを回っていたのかな」と思うようになる。

真面目なドラマ部分がもちろん面白いのだけれど、コメディ的にも観られてすごく楽しい。動転する父に執拗に水を勧める軍の役人たち。そのあと定期的にアプリで「水を飲む時間です」と表示されるのが何とも笑えるようなイラっとするような。また、兵士たちにヨナタンが語る父の逸話は、イスラエルの微妙な宗教事情の中で、かなり笑える内容。逸話というよりもはや武勇伝に近いとんでもないお話でした

映画全般に、突然報告を受ける父と母や検問を受ける市井の人々など、「受け」側の表情がとっても印象に残りました。話している人よりも、話されている人にフォーカスが当たっていたように思います。
いろんな要素が変なバランスで混じり合っていて、うまく消化できずに鑑賞後にも自分の中に残っている感じのする面白い映画でした。あと、ベストアクトはミハエルの飼っているワンちゃんです。
さち

さちの感想・評価

4.6
突出した視覚的美しさに眼福👏👏
フォックストロットを筆頭に耳に残る鮮やかな音達と静寂との対比、そして気になる気になる展開。その全てが映画的だし凄く好きだった。台詞が少ない分余白の余韻が凄い…

「判決、ふたつの希望」然り、テーマは重いけれどちゃんと希望はあってよかった。
大鳥涙

大鳥涙の感想・評価

3.0
あのスローテンポが耐えられなかった。幾つかハッとさせる良いシーンもあるのだが、構図が狙いすぎだったり、ちょっと作意的な鼻に着くシーンもあった。1時間半程度にまとめて欲しかったなあ。期待しすぎたため、残念感も強いです。
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