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スウィート・カントリーのKUBOのレビュー・感想・評価

スウィート・カントリー(2017年製作の映画)
4.0
東京国際映画祭18本目は、ワールド・フォーカス部門の「スウィート・カントリー」。ヴェネチア映画祭審査員特別賞を受賞している期待作だ。

人種差別の問題をテーマにした作品は「黒人」「ユダヤ人」関連で数多く作られているが、本作はオーストリアの原住民である「アボリジニー」を取り上げている。

1929年のオーストリアが舞台。心優しい農場主と暮らすアボリジニーのサム。主人が町に出かけて留守の間に現れた荒くれ者の白人に殺されそうになったサムは、正当防衛でその白人を殺してしまう。かくしてサムの逃走劇が始まる…。

この後の展開については、あまり触れない方がいいだろう。ともかくサムがかっこいい! アフリカから遠いアメリカに連れてこられた黒人と違って、アボリジニーにはオーストリアという大地がある。

場面場面に挿入される過去や未来のフラッシュも印象的だし、スクリーンに映し出されるオーストリアの大自然もたいへん美しい。

脚本も、人種差別もののステレオタイプになることなく、正義と偏見のバランスを上手く取って、新鮮な驚きと残酷な衝撃を我々に与えてくれる。

アボリジニーは、アメリカの黒人とは違って「奴隷」ではなかったが、無償で労働を強要され差別されていた。自身アボリジニー出身というウォーリック・ソーントン監督の想いが強く伝わる作品であった。
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