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パンとバスと2度目のハツコイのslvのレビュー・感想・評価

4.2
個人的には『愛がなんだ』よりもこちらの作品の方が凄くハマった。響いた。

今泉力哉監督の作品は『愛がなんだ』以外はほとんど見逃したままになっていたんだけど、これ観たらやはり出来るだけ今泉監督作品を観なくては!という気持ちになった。

なにこの絶妙にリアリティーのある恋愛のモヤモヤ感は…。私的には共感の嵐だった。
この脚本、凄いなぁ。今泉監督、恐るべし…。

まず、どこにでもいそう…と思わせるような親近感のある、丁度いい感じの魅力に溢れた主役二人のキャラクターが絶妙。

たもつ役の山下健二郎さんは、この人誰だろう…?と思いながら観ていたけど(三代目の方なのですね…まったく知りませんでした)、その程よい好青年ぶり・イケメン具合いが実に魅力的で、観ていくうちに私もたもつに心惹かれていった。

なので、私もふみと同様にたもつに対して好意を持ちつつも、いろいろとモヤモヤさせられてしまって何とも言えないような気持ちになったし、ふみの言葉のリアルさがいちいち的を得すぎていて、共感しかなかった。

たもつがバツイチで子持ちだと知った時の微かな失望感とか、好きだけど心にブレーキをかけて距離感を保とうとして、でもじわりじわりとたもつに心を惹かれていってしまう感じとか。
なんか、わかる、わかるよーーー。

なのに、たもつときたら、別れた元妻のことを今でも引きずっていることを正直に伝えておきながら、それでもふみにも好意を持っているようだし、ふみの想いに気付いてもいる感じで。。うーん、ズルい(笑)。

凄く好きな相手でも、片思いのままの方が、嫌いにならずにずっと想い続けていられるから幸せな恋なのかという問いとか。
自信のなさや、あれこれ考え過ぎて臆病になる、恋愛のジレンマとか。

ふみがたもつに「私のこと好きにならないでね」って言う場面が、なんかグサーっと刺さってしまった。

そんな微妙な関係の二人だけど、丘の上みたいなところで、ふみとたもつがお互いの本心と相手への想いを叫ぶ場面が最高だった。

なんか、スカッとした。

これをお互いに言わせるところが、今泉監督最高!って個人的に思ったところ。

そしてふみと妹が仲良しで、妹が絵描きであるという描写が、終盤のたもつを家に呼んだくだりで絶妙に活かされていたところも最高でした。

ラストシーンは、夜明け前の路上の二人の会話とやり取りが凄く微笑ましくて、キュンとするような爽やかな余韻が残った。

勝手な解釈で簡単に言うと、最初にプロポーズしてきたあの彼は「なんか違う」で、たもつは「あり」って言うことなんだと思う。ふみにとって。
それはもう、会って一目で感じるものというか、わかっちゃうもので、細胞とか遺伝子レベルで反応して、いざという時に心が「No!」とか「O.K! 」と言ってしまうものなんだと思う。
(ほかの人はどうかわからないけど、自分的にはそういうものなんだと思ってる…。)
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