ブラックユーモアホフマン

IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。のブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

3.8
ビル・ヘイダー最高。
実写のビル・ヘイダー久々に見た。(ピクサーとかの声優として最近はお馴染みだったから。)
そもそもコメディ出身の俳優がコメディじゃないジャンル映画とかシリアスなドラマとかで活躍してるのを見るのが好きだから終始ビル・ヘイダーだけ観てたと言っても過言ではない。
前作のプロモーションの時に大人になった自分の役を誰にやって欲しい?って聞かれた子役たちが答えた理想のキャストの中で実現したのはビル・ヘイダーとジェシカ・チャステイン。
そこでみんな割と安易にイケメン俳優とか答えてる中でビル・ヘイダーって答えるフィン・ウルフハード君のセンスがヤバい。天才だと思う。
アイツ、リッチーは前作からもうキャラとして大好き。役者も含めて。
ルーザーズの面々はそれぞれに事情を抱えていてそのコンプレックスとの戦いというのが前作だったけど、リッチーだけは、目が異常に悪いだけで特に何も抱えてなかった(ように見えた)。それもまた良かったんだけど、本作で実は彼にもコンプレックスがあったことが明かされてキャラクターの深みが増していたのもすごく良かった。彼はそれをルーザーズクラブの仲間たちにすら打ち明けなかったのだというところまで含めて切ない。彼のジョークはある種、自分を守るための武装なんだ。
あとGAGの宮戸にそっくり。

前作より更にリッチーと名コンビ感を増しているエディも最高だった。『シャザム!』でも最高だったジャック・ディラン・グレイザー君が演じてた前作から、今回演じてるのはジェームズ・ランソン。ちゃんと顔似てるし、たまたまつい最近観た『フッテージ』にも出てたあの人だ!あちらでもちょっとコミカルな役だったけど、とてもいいな。

大人のキャストがちゃんと子役と似てるのにそれでいて演技も良かった。名キャスティング。ベンも体つき全然変わってるのに顔はなんか面影あるもんね!そしてスタンリーが激似。
マカヴォイはシャマランの映画ではむしろペニーワイズ的な演技が見事だったのに、本作では全くその影もよぎらない。器用な人だなぁ。

前作は本当に傑作だと思ってる。それに比べると今回は一本の映画としては不恰好。整理しきれてなくて上手くない。
正直、あってもなくてもよかった続編だとは思う。一作目が完璧に物語として閉じていたので別に律儀に27年後の話を描く必要はなかったのだ。
全体として前作のファンに向けたファンサービス映画な感じ。だからこそ長尺で、前作のファンの一人としては、もっと永遠に観ていたいくらいではあったけど、一本の映画としてはあまり。
何よりペニーワイズがあまり魅力的でなかったのが残念。前作の方がペニーワイズの魅力が光ってた。ビル・スカルスガルドの見事な演技や、怖がらせ方のレパートリーの多さ、アイデアの豊富さ、ファンタスティックさが素晴らしかった。もっと27年分のペニーワイズの気持ちと今回にかける意気込みを感じたかった笑

とはいえ良いところも沢山ある。特にビル・ヘイダー。
『20世紀少年』的なエモさがある。子供の頃にはあんなに印象的だった出来事も大人になると忘れてしまっているというのは、ペニーワイズの仕業でなくてもよくある話。
彼らは少年時代に自分のコンプレックスと戦って一度は勝利したはずなのに、大人になるとそのことを忘れてしまっていて、結局問題を解決できないまま現状に甘んじてしまっている。あの時嫌った大人たちと大して変わらない大人になってしまっている。そんな彼らはもう一度自分の過去のトラウマと戦い克服する。
マジで人生ってこの連続だなあと思う。一度克服したコンプレックスやトラウマは完全に死んだわけではなく、しばらく経つとまたぶり返してくる。その度に戦わなければならない。そこで恐怖に負けて立ち向かうことを怠ると駄目になっていく。しんどい作業。

スティーヴン・キングはファンタジックな設定で人生を描くのが本当に上手い。あと今後はスタン・リーみたいに自作の実写化作品全部にカメオ出演すればいいと思う。

グザヴィエ・ドランの映画は一本も観たことなくて、勝手にスカしたいけ好かない野郎だと思ってたんだけど、こうやってジャンル映画にも出て、いい感じにくだけた演技したりもできるんだ、と勝手に見直した。ちゃんと監督作観るよ。