幽斎

プリズン・ランペイジの幽斎のレビュー・感想・評価

プリズン・ランペイジ(2017年製作の映画)
3.6
GoToトラベル効果なのか、京都も少しずつ観光客が増えて来ました。私の住まいの近くに有る南禅寺も府外ナンバーが見立つ様に成りました。友人には観光が正業な人も多く、感染防止と経済の両立は難しいですが、本当は紅葉の綺麗な頃にフォロワーさんを招いてオフ会でも、と思ってましたが先ずは中国の武漢肺炎の一刻も早い収束を願ってます。

何の話でしたっけ、あぁ映画の話でしたね。東京へ出張する機会も増え、基本的にはプリンス・ホテルを利用するのですが、時にはパジット・ホテルも泊まります。その時の楽しみはVOD。知らない映画を見つけると嬉しく成りますね。これまで「彫刻家」「ボンド・ストリート」「森の中のイーラ」「ネクソス」をレビュー。

この作品には元ネタが有り、1983年「明日に向って走れ」A Killer in the Familyで既に映像化。父親をRobert Mitchum、長男がJames Spaderと超豪華メンバー、これでTVドラマとは恐れ入る。本作は逃亡劇をメインに描いたJames W. Clarke原作「Last Rampage」(最後の大暴れ)を映画化。渋い保安官Bruce Davisonは、様々な警察官を掛け合わせた架空の人物として描かれる。

Dwight H. Little監督なのでエロは期待出来ない。強いて言うなら保安官の妻役Megan Gallagherのオッパイ、見えないけど(笑)。熟女ファンなら要チェック。監督の良い点はハリウッドで多数演出してるだけ有り、一本調子の様に見えて、人物描写が意外とキメ細かい。原作は未読だが脱走に協力した3兄弟、特に長男にフォーカスして、親子の会話で平気で「イエス・サー」と返事するのは、完全に「恐怖」で支配されてる事を意味する。子供達は父親の事の大半は母親から聞かされてた筈で、盲目的な愛を持つ母親と、自分の事しか考えない父親との現実を逃亡の中で目の当たりにする描写は見事。

本作は主演Robert Patrickの持ち込み企画で、彼自身が出資してる。600万$の制作費で興収1万$以下と惨敗。彼は「ターミネーター2」以降も地道な努力を続け、しっかりハリウッドで生き残った。今はTVが主戦場だが、自ら映画を制作する事は儲ける、損する以前にスタッフやキャストから信頼を勝ち得る事が重要。実際の事件同様に、出会った相手から車を捕る為に躊躇なく人を殺す「おぉ、彼はあんな役も出来るのか」とプロデューサーの目に留まれば次が開ける。今のハリウッドは慢性的な悪役不足に陥ってるので、良い視点だと思う。

京都に戻って事件を調べると、生き残った2人の兄弟は死刑判決を受けたが、未成年の為アリゾナ州法で減刑され終身刑に処せられた。そして本作が逃亡劇を極めて忠実に描いてる事も分った。当然だが裁判で被害者の多さを知った市民は、脱獄を許した刑務所に非難が殺到、多くの責任者が処罰された。殺人犯が死んで尚、事件は終わらなかった。Gary Tisonは刑務所がアリゾナ砂漠のド真ん中に有る理由が、良く分ったろう。自分でメキシコ人が此処で多くが死んだと言ってたのに。

ホテルの暇潰しには十分なクオリティでした。Robert Patrickのファンなら観て損は無い。
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