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ニューヨーク 最高の訳あり物件のKUBOのレビュー・感想・評価

3.5
東京国際映画祭11本目は、コンペティション部門の「さようなら、ニック」。

忙しくて前情報を入れずに見て「普通におもしろかったな〜」などと腑抜けた感想を感じていたら、これ「ハンナ・アーレント」のマルガレーテ・フォン・トロッタ監督作品だったのですね。ビックリ! 上映後のQ&Aでプロデューサーのベッティーナ・ブロケンパーさんの語ったところによると、次回作の話をしていた時に「コメディはまだやったことがないからやってみたい」という監督の要望で決まったという。(ちなみに、今度はドキュメンタリーを撮影中とのこと)

旦那が若い女と浮気して出て行ってしまった元モデルでデザイナーのジェイドの部屋に、突然、旦那の前妻マリヤが帰ってくる。部屋は半分はマリヤの名義だと言うのだ。かくしてフラれそうな現妻と前妻とのおかしなおかしな同居生活が始まる。

「キャリアウーマン」と「子と孫を育ててきた母」という真逆な立場の2人を演じるイングリッド・ボルゾ・ベルダルとカッチャ・リーマン(「帰ってきたヒトラー」)が素晴らしい。犬猿の仲から始まって、少しずつお互いを理解していく演技はコメディでありながら実に繊細。

フォン・トロッタ監督は「強い女性」という言葉が嫌いらしいが、それは「男性」だったらそうは言われないことを「女性」がすると「強い女性」と呼ばれるから。そういった意味では、本作はフォン・トロッタ初のコメディではあっても同じく「(強い)女性」を描いている作品なのだ。
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