こたつむり

ALL YOU NEED is PUNK and LOVEのこたつむりのレビュー・感想・評価

ALL YOU NEED is PUNK and LOVE(2017年製作の映画)
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♪ 誰にも見せないその姿を
  もうちょっとだけ 見てたかったんだ

えーと。
今回は長いです。通常の2倍の文章量です。
熱量も高めなのでご注意ください。

★ ★ ★

常に全力疾走のBiSH。
たまたまyoutubeで『BiSH-星が瞬く夜に』を聴いたことから、僕も遅まきながらハマりました。激しいドラムと感情を揺さぶる旋律にガシリと鷲掴みされまして。そのままズブズブと。

何しろ、彼女たちの魅力は単純じゃないのです。楽曲にしても、SCRAMBLESによる集団創作態勢(これは画期的)なので間口は広く奥深く。しかも、それを統括する松隈ケンタさんが先人へのリスペクトを隠しませんからね。1stアルバムの1曲目『スパーク』なんて直球ど真ん中(イエモン!)。思わず口角が上がる次第。

また「楽器を持たないパンクバンド」と称するようにアヴァンギャルドな部分も魅力のひとつ。放送禁止用語を恐れずに歌い上げる楽曲や『ピンクフラミンゴ』も真っ青(←大袈裟)なPVは見事な限り。ちなみに映画が好きな人には『MONSTERS』のPVをオススメしたいです。ハートマン軍曹を模した外国人が歌う“お遊び”に頬が弛みますよ。

でも、本当に素晴らしいのはライブ。
僕はyoutubeでしか触れていませんが、全力投球で臨んでいることが伝わってくるのです。クオリティが低いときの映像もありますが、それも良いのです。飾ることなく“本気”だから上手く表現できない時もあるわけですからね(プロフェッショナルならば最低限のクオリティは確保すべき、という意見もありますが、そのために大切なものを失ったら意味がありません)。

これはヒーロー映画と同じ構造。
不器用な人柄が透けて見える彼女たちが、本気で表現する姿勢にカタルシスが発生するのです。そんな彼女たちに「がんばれ」と言わずして、何を応援するのか。しかも、その不屈の精神こそが“青春”の証ですからね。楽曲の方向性とピタリとハマっているのです。

ゆえに彼女たちの個性を知れば知るほどハマるわけで。最初のうちは楽曲やダンスのクオリティを担うアイナ・ジ・エンドさん(圧倒的な歌唱力と純粋さが魅力)とセントチヒロ・チッチさん(バランスの良さと責任感の強さに惹かれます)に注目していたのですが、爆発的な成長を遂げるアユニ・Dさんのファニーボイスがクセになり(ソロプロジェクトであるPEDROも要チェックやで)滑稽さと深淵に潜む暗黒面を体現する狂気の陰陽、ハシヤスメ・アツコさん(落ち込んだ時はソロのPVがオススメ)とリンリンさん(シャウトが格好良いです)に上下右左に揺さぶられ、何よりもBiSHの存在を体現している(地味なように見えるけど最も重要)モモコグミ・カンパニーさんにギュッと鷲掴みにされたのです。いやぁ。尊いですなあ。

★ ★ ★

と、ここまでが感想の前段。
長かったですね。スミマセン。

本作はBiSHを追ったドキュメンタリー。
…なのですが、正直なところ、初心者向けとは言えません。何しろ、監督さんの邪な動機から始まった作品ですからね。主体はBiSHではなく監督さんにあるのです。

しかも、作品として捉えるとグダグダな構成。
何を撮るべきか…が曖昧なのですね。でも、監督さんがズブズブと沼にハマったから…と考えると他人事とは思えません。うん。分かる。分かりみが深いよ。少なくとも「彼女たちを応援したい!」という想いだけは存分に伝わってきました。

まあ、そんなわけで。
「僕がBiSHにハマるまで」という監督さんの物語。ある程度は彼女たちを知っていることが前提なので、まだ名前しか知らないとか、楽曲をチラリと聴いただけならば、本作よりも先にyoutubeでBiSHに触れることをオススメいたします。

ちなみに何がオススメかと言うと…初心者向けならば『BiSH-星が瞬く夜に』が良いと思います。そこから王道ポップチューンをお求めならば『オーケストラ』や『プロミスザスター』とかも良いですね。

また、ガツンガツンと攻める『MONSTERS』や『遂に死』はパンク上等ですし「お上品な建前なんてゴミ箱行きだぜ!」的なアヴァンギャルドで行くならば『OTNK』か『NON TiE-UP』がオススメです。

他にも青春の甘酸っぱい痛みとかエモーショナルな感情を揺さぶられたければ『本当本気』や『優しいPAiN』に口角が上がると思いますし、狂気に触れたければ『Am I FRENZY??』や『FREEZE DRY THE PASTS』が闇の淵へと誘ってくれることでしょう。

あと、先人へのリスペクトを忘れない『スパーク』も当然の如くオススメですし、アダルトな雰囲気をお求めならば『My landscape』や『DiSTANCE』はオルタナティヴの魅力にあふれていて素敵です。

更にディープなところに行きたいのならば…ってオススメし過ぎですか。そうですか。要は「全部聴け」ってことなのです。ぐへへへ。

余談・1
ファン(清掃員と呼ぶのが正式)の一体感を味わうことが出来るのもライブの魅力ですね。グルグル回ったり、肩を組んだり、サプライズでペンライトを振ったり…観客も本気で楽しむ姿勢が素晴らしいと思います。

余談・2
僕は楽曲重視派なのでアーティストの人柄に惹かれることは稀です。だから、彼女たちは例外中の例外。某テレビ番組では沼にハマった芸人さんたちが出てきたようですが…分かりみが深いなあ。
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