エミさん

泉の少女ナーメのエミさんのレビュー・感想・評価

泉の少女ナーメ(2017年製作の映画)
3.5
TIFFにて。
ファンタジックなヒューマン映画。ジョージア(元グルジア)の山村にある実在した話。
神秘の泉が湧く村。麓の街で徐々に再開発が進む中、世の中の情報から取り残され、泉の治癒力や伝承者のカリスマ性を信じて暮らしている人々が居る。その神秘の泉を守る一族の継承者ナーメが主人公。まだ10代の少女であるナーメは、伝統の継承と、自分が想う人生との葛藤に悩みながらも、老いてきた父を心配し、学校にも行かない、恋愛も出来ない、求められる『特別な』自分を生きている。
ある日、再開発の影響で泉に異変が起こってしまう。自然のバランスが崩れたことを悟ったナーメは、伝承者としての選択を迫られる。最後にナーメが下した決断とは…!?

全体的に、自然の映像美やナーメの神秘性が、とても綺麗な映像として映し出されている。霧立った村の雰囲気の中、ナーメが水を運ぶシーンだったり、水の奏でる音や映像など、『水』がとても大事なキーポイントであることが伝わってきた。迫力とは違う側面を持った水の力が映し出されていて、スクリーンに吸い寄せられるような特別の世界が体験出来ます。

劇中、父が「何故、泉の水を飲まないんだ?身体のために水を飲め!」と、兄弟たちを怒るシーンがある。
水は人間にとって無くてはならない命の源である。『どんな水を飲んでいるのか?』で、命の質まで決まると言ってもいい。特別な泉の水を飲んで病気が治る人もいれば、良かれと思って飲んだ水が思わぬ水毒を招いたりもする。今でこそ、お金を出して飲料水を買うことは普通の風潮になったが、以前は飲み水を選んでお金で買うなんて考えられないと思っていた人の方が多かったのではないだろうか。時代の変化に伴って飲料水に対する価値観も変わり、『特別な水』を買い求める人の方が増えた。何かスピリチュアル的な伝統だ宗教だと括られると特別に思ってしまうけど、特別な水を選んで取り入れていることは、水の治癒力を信じているという意味では、何ら変わりないのではないだろうか。

中盤で、父の具合が悪くなって、3人の兄が家に集結するシーンがある。 兄の1人が「宗教、思想、資源、この3つが力を合わせて初めて本領を発揮するんだ」と語る。そして兄弟が奏でるシンボリックな歌が響く。物語のメッセージとも取れる、とても素敵なシーンで、スクリーンにず〜っと魅入ってしまいました。生きることは自然との共存。破壊なくして建築はあり得ないけど、人は自然の摂理をわきまえて生きていかねばいけないことを痛感しました。