Jeffrey

聖なる泉の少女のJeffreyのレビュー・感想・評価

聖なる泉の少女(2017年製作の映画)
3.0
「聖なる泉の少女」

冒頭、霧に包まれた森と湖。妙なる静けさ、神秘なる交感、ここはジョージアの南西部、トルコとの国境を接するアチャラ地方の山深い村。キリスト教の一派、先祖代々、泉、泳ぐ魚。今、静寂の中を生きる…本作はザザ・ハルバシ監督が2017年にジョージア・リトアニア合作で撮り、ギオルギ・シュヴェリゼの繊細な(撮影)映像美で描いた作品で、去年劇場で公開されていたのを見逃してしまい、DVDを購入して初鑑賞したが静寂で神秘的で良かった。極力台詞を削ぎ落として、映像だけで観客に語らせる手法をとっている。全編をほぼ通して水の流れる音が強調されているのが良かった。

本作は冒頭に、旧約聖書の引用し、川に置かれた岩を捉えたファースト・ショットで始まる。それを固定ショットで長回しする。カットが変わり、大皿に魚が1匹浮いている。男性が川の水でアンティークの食器を洗っている。次に、木の棒をナイフでそぎ落とす。カメラは静寂な魚のオブジェをスライド撮影し、1人の女性を鏡越しに捉える…さて物語は、西アジアに位置し、ロシア、トルコと隣り合い、シルクロードの通る場所でもあった国、ジョージア。黒海に面したアチャラ地方を舞台に、その村に住む人々の傷を治癒する力を持つとされてきた泉の水を守る娘の姿を描いていた信仰、祈り、自然の神秘を通して現代に生きる私たちに問いかける詩的なドラマで、静けさを強調した物語である。


やはり本作はフレームインされる美しい田舎の風景をロングショットで捉えたり、文化、儀式、宗教的な要素、民族音楽を含めたジョージアに関する全てのものが写し出されていて非常に映像的には好みであった。特に火を起こす場面が繰り返し挟まれるのは印象的であったし、霧のに女性が歩いて消えていくまでの固定ショットも印象的だ。そしてクライマックスの湖が霧に包まれていく場面等はアンゲロプロスの「シテール島へのの船出」を彷彿とさせる。人間と超自然的なものを融合したかのような作品であった。どうやら監督は今年の1月に心臓発作のため急死したそうだ。
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