たりほssk

負け犬の美学のたりほsskのネタバレレビュー・内容・結末

負け犬の美学(2017年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

トップに上り詰める才能ある一握りの勝者の下には、無数の敗者が存在します。言い換えればそれが、普通、平凡と呼ばれる人々、でも世の中の大多数はそういう人々なのです。
そんな彼らに焦点を当て、その生きざまを正面から描いたのがこの作品。まさに凡庸である自分へのエールにも思え、感動しました。

特に公開練習の場面では泣けてくるほどでした。他人に馬鹿にされたり、低く見られたりすることは辛いことですが、それも淡々と受け止めるスティーブ。それは彼が、他人の評価を気にしてボクシングを続けているのではないからだと思う。負ける度になぜ自分はボクシングを続けるのかと問うことになるだろうし、彼は自分のために自分が好きだからやっているということを強く自覚しているのだと思う。(ただものすごくストイックにボクシングに精進しているのかと思えばそれほどでもない感じで、その辺ユルいのですが、そういうところにもリアリティーを感じます。)

一方で彼には家族愛というものがある。現実的な妻と、ロマンチストの夫というのはややステレオタイプ的ですが、二人はすごく愛し合っていて、ピアノが好きな娘も小さい息子もすごくかわいくて家族全員仲良しで、助け合っているのがよくわかる。そんな娘にスティーブは自分の(表向き)みじめな姿を見せたくないと思うのは、すごくよく理解できて切なかった。そして娘の好きなピアノを続けさせてやろうとする気持ちも、自分が好きなことを続けているだけに、より強く伝わって来た。
ラストはもう、勝ち負けなど関係ないという感じ。幸せな気分になりました。
ああ、これこそが人生なんだと思いました。
たりほssk

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