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僕の帰る場所のchidorianのレビュー・感想・評価

僕の帰る場所(2017年製作の映画)
4.5
観終わってから時間が経つにつれ、これは凄い映画だと気付いてきた。
「ドキュメンタリータッチ」という言葉があるけれど、この映画はまさにそれ。在日ミャンマー人家族の日常に、寄り添うというよりグイグイ入り込んでいく感覚。お母さんと子供ふたりは実際の親子のようだけどお父さんは違うわけだしみんないわゆる素人だそうだから、ドキュメンタリー映画を観ているような気分になるんだけど実は違うという驚き。なんだろう、むしろプロの役者さんが出てくると浮いてしまうという、不思議な感じになっていた。

長男役のカウン君が素晴らしい。環境に翻弄されてとても辛い彼の葛藤が痛いほど伝わってきて、思い出しても涙ぐんでしまう。

ミャンマー人家族が日本で暮らすことの大変さが、近い距離感で伝わってくる。出来事はとても理不尽なんだけれど、そのことはあまり強調されない。
2年前くらいの私だったら気付けなかったかもしれないが、3月に名古屋入管でウィシュマさんが亡くなってからは自分も積極的に情報収集するようになったし、日本の難民政策の極悪さを知ってしまったので、難民申請が却下されるところとか、ああこれはそういうことかとわかるようになった。
逆に言えば、ニュースや論考として見聞きしてきたことが、現実として、人に、どういう風に降りかかってくるのか目の前に突き付けられた感じで、とても悲しく、辛い。

藤元明緒監督という才能には、『海辺の彼女たち』というベトナム人技能実習生の映画を撮った人、という形で出会い、『僕の帰る場所』はその予習ということで観たが、期待を裏切らない素晴らしい作品だった。
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