小説家として知られるプラーブダー・ユンが監督した映画はアイデンティティーに関するものだった
ノイジーな音楽に合わせて黒いビルがこれ見よがしに映された冒頭のシーンから既に惹かれたのだけど、その次のシーンで男の背中にピントが合ってなかったり主人公の女以外最初顔が見えなくなっていたり電話相手の声が聞こえないようになっていたりと、後の展開に繋がるような描写を丁寧にかつミステリアスに映していて、映画監督として優れた手腕を持っているなと唸った
想像力で描かれたルソーの蛇使いの女から着想を得た話の内容も、見ていたら主人公の女と男がどういう関係かなんとなくわかったものの、文学的な問いや幻想的な演出のおかげで最後まで見入ってしまい、若干世にも奇妙な物語臭のする話でも語り口でこうも魅力的になるかと感嘆した
BGMが途中からルソーの絵のように熱帯雨林チックになるような細やかながらハッとさせられる演出も多々あって、もし劇場公開されたらもう一度見たい作品