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ポーカーの果てにのbackpackerのレビュー・感想・評価

ポーカーの果てに(2017年製作の映画)
4.0
我他彼此の見

東京国際映画祭2017『ポーカーの果てに』鑑賞しました。
これは個人的にかなり好みの映画でした。
デモの熱気吹き荒れるトルコのタクシンにて、我関せずを貫く主人公アルパーの部屋に集う人々の、主張と主張のぶつかりあいを描きます。

高校時代の友人と毎週ポーカーをするのが楽しみなアルパー、彼の彼女で政治関連の新聞記事を書くデフネ、弁護士で妻子持ちのカーン、デモへの意気込みだけは立派なアルトン、テレビ局を辞め無職のラフィ。
ここに、催涙ガスに追われ逃げ込んだ2人の女性と、デモに出かけ怪我をしたデフネを介助してきた謎の男と、喧嘩が絶えず柄の悪い隣人夫婦が主要登場人物です。
すぐにいなくなってしまう人もそこそこいますが、非常に上手くまとめられていて、テンポもカメラワークも良く、見ていてダレませんでした。

ほぼアパートの一部屋で展開するわけですが、カメラがかなり縦横無尽に動き回ります。撮影担当の方は部屋の明かりや様々な撮影方法を試したとおっしゃっていました。納得のクオリティです。

室内での会話劇ですが、自分たちの主義主張を言い合うだけなのですが、受け手の自分は「皆自分の正義を持っているんだなぁ」といずれの主要にも共感したり拒絶したり。
大きくは行動型と非行動型の2者に分けられますがその中でも行動するor行動しないの理由が異なります。

ターニングポイントは、アルトン、ダフネ、男、アルパーの4人だけになったとき。
男が席を外したとき、アルトンが「男は銃を持ってる、きっと刑事だ」と言い出します。この言うだけ番長、また混乱の種を撒き散らしやがって……なんて思いましたが、ダフネもその危険性を考え追い出すようにいいます。
アルパーは一貫して穏便に事を済ませようとしていたこともあり、追い出すという提案にも渋りますが……。
結局、アルパーが口火を切ることになる。
憤慨する男に対し、手のひら返しするアルトン。あの少々独善的ともいえる正義感に燃えたダフネすら視線で指示してくるだけ。
結局こいつらも、自分本意の利己的人間じゃないか。
アルパーを批判していたくせに、これか。
結局のところ、アルパーは言い訳を並べてはいましたが、正直に話していたんですね。


物事は多面的なのだから、矯めつ眇めつ眺めていかないといけないなぁと、心底思わされました。
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