いののん

愛と法のいののんのレビュー・感想・評価

愛と法(2017年製作の映画)
4.0
大阪を拠点に活動する弁護士ふたり。ふたりは男性同士、結婚式も挙げた。この2人の弁護士:カズとフミが、めっちゃ魅力的! 多くの裁判を抱え、たくさんの人の相談にのり、あんなに忙しい毎日なのに、どうしてこんなに日々の生活も大事にできるの? 涙をながしながらも、前に進めるの? 本当にステキだ。


彼らの担当する裁判を通して、彼らの弁護士としての在り方が見えてくる。依頼人がどんなに苦しい状況に置かれているか、それがわかるから、だから、はじき出された人の側に、徹底的に立とうとする姿勢。


そして、彼らの担当する裁判を通して、この国の息苦しさも、見えてくる。「空気が読めない」と、あっという間に、はじき出される日本。自己主張をすると叩かれる。みんなと同じが、何よりも求められる国。


自分は、多数の側にいる(つまりは安全なところに位置している)と思っていたら、いつの間にか、それこそあっという間に、少数派に位置していた。同じ感覚だと思っていた人たちは、いつの間にか、あちら側にうつっていて、気づけば自分はマイノリティとなっていた。そのことにガクゼンとしている、という話もあった(ある裁判の話で)。その話に、背筋が凍る。これは、他人事では、ない。これは、この国、つまりは、アタシが暮らす場所での話だ。アタシも、自分でも無意識のうちに(あるいは打算的に)、抑圧する側にまわっているかもしれないし、それとおんなじくらい、はじき出される側に、立たされてもおかしくない。その時、アタシは頑張れる?


「(はじき出された人に、)皆と同じ権利を!」と口で言うのはたやすい。でも、共に闘うとしたら、それは、どれほどしんどくて、どれほど大変なことだろう。そのことを想像することは難しくない。カズとフミ、彼ら2人の流す涙が、なんとも尊くて。


彼らの強さは、彼らのやさしさから構成されているのかもしれない。彼らのやさしさは、彼らの流してきた涙でできているのかもしれない。きっと、2本の葦のように、風に揺られ、雨に打たれながら、それでも2人で手を取って歩み続ける、考える葦なんだと思う。彼らは、2人きりじゃない。2人の世界の扉は、いつでも開かれている。その風通しの良さ。彼らのもつ優しさや強さや愛は、どんどん他の人へも、伝わっていくんやなあ。



「チョコレート・ドーナッツ」から、いっぽ、前へ。
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