コタロヲ

地球はお祭り騒ぎのコタロヲのレビュー・感想・評価

地球はお祭り騒ぎ(2017年製作の映画)
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映画館で鑑賞

1つの車の中の二極化。

フツフツとした焦燥感を駆り立てられる異様な風の音は、本田の内界に吹く風の音で、その内界の音と、外界の豊かな自然音の交錯は、自己像を減衰させ、自分の存在自体が危うくなる。
だが、目の前にいるポール・マッカートニーを、ポール・マッカートニーとして捉えているという事実はあり、それが不可疑性を生む。

ニュースなどでも耳にし、何かと目の敵になる「存在論的恐怖」は、今作では、1人の男の“1歩”を手助けした。まるで、裏返っていた靴下を元に戻すような。
そんな感じがしました。

はっとさせられたのは、ポール・マッカートニーへの歓声が、目の前に提示されてるものが見えなくなった途端、悲鳴に聞こえたこと。
状況要因を考慮して世界を捉えている。“祭り”も、内容はどうであれ、遠くから見れば喜劇なのかなと思いました。

唐突にシュールな笑いを挟んでも、決して張り詰めた糸は緩むことはなく、終始一貫した緊張感がある。
この面白さは、大田原愚豚舎の作品の魅力の1つかなと思います。
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