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ひかりの歌のギルドのレビュー・感想・評価

ひかりの歌(2017年製作の映画)
4.5
【想いは出会いで得たプリズムを通じて行動・仕草に変換されていく】
■あらすじ
光をテーマにした短歌コンテストで1200首の中から選ばれた4首の短歌を原作に、この世界を生きるための支えとなる光のありかを、現代に生きる4人の主人公の姿とともに描きだす。

都内近郊に住む詩織、雪子、今日子、幸子は、それぞれ誰かを思う気持ちを抱えながら、それを伝えられずに日々の生活を続けている。旅に出てしまう同僚、他界した父親、閉店が近いアルバイト先の仲間、長い年月行方知れずの夫のことを思いながら、彼女たちは次の一歩を踏みだしていく。そんな彼女たちをときに静かに、やさしくつつむ光がある。
『ひとつの歌』につづく、杉田協士監督による長編第2作。

■みどころ
傑作!
4人の女性の抱える想いを直接伝えることが出来ず、償いとして過ごす場所へ留まる・被写体の地に運ぶ・匂いを嗅ぐ…の別の動機付けに変換して「想い」を再翻訳した映画で良かった。

杉田協士監督の他作品(ひとつの歌・春原さんのうた)では起承転までは魅せて結を敢えてぼかす要素が強い。
それが結末の分からないけど愛おしくて素敵な時間が繰り返し循環する所に魅力があると思う。
それに対して、ひかりの歌は短歌の題名を結に置いて起承転の過程に異なるエピソード4つが交錯する孤独の多様性のようなものを感じて新鮮でした。

4人の女性はそれぞれ「誰かの不在」に対する孤独感を抱えて生きている。
その孤独感を払拭するために誰かのためにいる時間を出来るだけ長く取り続けたり、誰かのために歌を歌ったり、あてもなく走り続ける…など別行動に変換している。
短歌の題名を結末に持っていくだけでなく、孤独感に対してプリズムを通して屈折しないと伝えきれないもどかしさを本作で強調している所に魅力を感じました。

願望や想いをどこにもぶつける事が出来ない。何らかの想いを馳せたり唐突な涙には背景が存在するも、それを解像して現出するのではなくバイナリとして留めて他の行動・仕草に変換する姿が素晴らしかったです。
しかも登場人物らは何らかの形で同じ場所・時間を共有していて、微かにマルチバースを展開している。そこに現代社会へ生きる言いたい事を言えないもどかしさの中で生きる私達に向けたメッセージのようなものを感じて、感動しました。

同じ飯岡幸子さんの春原さんのうたと比べてリアリズムなカメラワークに寄せてるけど、これはこれで大好き☺️

春原さんのうたでの奇妙な展開のルーツをひかりの歌で実感できたのも興味深かった作品でした。
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