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ひかりの歌のネットのレビュー・感想・評価

ひかりの歌(2017年製作の映画)
4.5
大好き。アメリカにライヒャルトの「ライフ・ゴーズ・オン」があるように、日本には杉田協士の「ひかりの歌」がある。
言葉で定義できない曖昧な人間関係、世界(人、出来事、場所)の分からなさ、人々のゆったりとして柔和な体・発声・手振り身振り。人々が土地に生きて、何かを思っていること。
それだけに、俳優の硬さ(身振りや声の)や、話の収まりの良さ(良すぎる)を感じる4章にかなり違和感を覚えるものの、実は4章は柔らかさを獲得するまでの話であったことがわかり納得。
あと、背中。「パリ、18区、夜。」の背中は生々しい肉体そのものだが、今作の背中は顔を隠す壁としての背中。
現在の映画界でスタンダードで撮ることの意義、というのはずっと考えていたのだが、監督は理論をガチガチに詰めるタイプでは無いらしい。製作経緯を見ても、成り行き(という言い方も失礼だが)で撮っているし。無意識でこういう映画を作れてしまう末恐ろしさ…

とにかく、分からなさが好き。テキトーに見えるタロット、ぶっきらぼうな告白。公園を飛び出し道にまで出て、夜まで延々続けるランニング。父の写真、同伴者の親切心。
分からなさの原因の一つとして、登場する男たちの朴訥さがある。

難しいのが、監督がティーチインでも述べていた「原作短歌が具体的なので、それを映像化しなければならない」という枷。見る者としては、その映像がタイトルの答え合せのように映ってしまう。まあ、今の自分が伸び伸びとした映画を求めているが故に、作品に縛りを与えてしまう設定に対して否定的になってしまうのだろう。
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