杉田監督と歌人の枡野浩一さんが選出した4つの短歌を元に作られた作品なのだけど、面白いとか、面白くないとかそういったものに全く属さず、発さないところに好感を持った。
短歌は誰に対しても等しくひらかれているものである一方で、とても私的なものであり、詠み手の世界へ踏み込むことが出来ない、決して侵されない領域が存在していると感じていて、そこが短歌の良いところだと私は思う。
アフタートークで、この映画は誰に届けたいですか?という質問に対して杉田監督が自分に届けたい、自分が一番響くものを作りたかったと言っていて、それがなんだかとても良かったし、あ。なんか短歌ありのままみたいだ、と思った。
監督自身も出演者も『映画』に何ひとつとして消費されていないし、記憶の断片ですら誇張せず、〝物語〟としても扱わない。
反対になった電池が光らない理由だなんて思えなかった/加賀田優子
自販機の光にふらふら歩み寄り ごめんなさいってつぶやいていた/宇津つよし
始発待つ光のなかでピーナツは未来の車みたいなかたち/後藤グミ
100円の傘を通してこの街の看板すべてぼんやり光る/沖川泰平
物語はない私たちへ
等しく、やさしい光のうた