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ひかりの歌のumekoのレビュー・感想・評価

ひかりの歌(2017年製作の映画)
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杉田監督と歌人の枡野浩一さんが選出した4つの短歌を元に作られた作品なのだけど、面白いとか、面白くないとかそういったものに全く属さず、発さないところに好感を持った。


短歌は誰に対しても等しくひらかれているものである一方で、とても私的なものであり、詠み手の世界へ踏み込むことが出来ない、決して侵されない領域が存在していると感じていて、そこが短歌の良いところだと私は思う。


アフタートークで、この映画は誰に届けたいですか?という質問に対して杉田監督が自分に届けたい、自分が一番響くものを作りたかったと言っていて、それがなんだかとても良かったし、あ。なんか短歌ありのままみたいだ、と思った。


監督自身も出演者も『映画』に何ひとつとして消費されていないし、記憶の断片ですら誇張せず、〝物語〟としても扱わない。


反対になった電池が光らない理由だなんて思えなかった/加賀田優子

自販機の光にふらふら歩み寄り ごめんなさいってつぶやいていた/宇津つよし

始発待つ光のなかでピーナツは未来の車みたいなかたち/後藤グミ

100円の傘を通してこの街の看板すべてぼんやり光る/沖川泰平



物語はない私たちへ
等しく、やさしい光のうた
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