エミさん

ライフ・アンド・ナッシング・モアのエミさんのレビュー・感想・評価

2.7
TIFFにて。
シングルマザーとその息子のそれぞれのリアルな暮らしが映し出されている。リアルな日常の映像には説得力がありました。

平穏な日常を求めて毎日を頑張っている母親。手本になる大人の男性がおらず、何処へ向かえばいいか分からず毎日がやりきれない息子。母はもちろんのこと、学校でも周囲でも何とか道を踏み外さないように支援をしているのだが、本人に受け取る気がなく、悪い友達の影響ばかりが彼の心に入っていく。「人生って何の為にあるのだろう?自分は何処に向かえばいいのだろう?」と、道に迷い、悶々と過ごした彼の人生の先に繋がったものは何処か…!?という内容の作品。

常々、社会的援助制度はあるのに、審査が厳しかったり、必要な所に情報が届いてなかったり…と、救済は無駄になってしまっているもったいなさを感じているのですが、この映画の主人公同様、社会的支援を受けることが出来るのに受取らない人もいる。理解力に欠けているのか、プライドの問題か、対人の信頼性の問題か、それは分からないが、必要な人に必要性を感じてもらえなければ何も意味がない。
人は正しいかどうかよりも情で行動する人が多いと思われる。ヒューマンドラマによく出てくる常套句「お前のためを思って言う」っていうセリフ。ドラマなので、たいていの『お前のため』は、ろくでもない結果をもたらすのですが(笑)、人は理性で考えた時、自分がどうしたいか?が最優先、そしてその次は、正しい人間の言葉よりも、自分と親しい人間の言葉を優先して結果を選択する。良いか悪いかではない。

「お前には父親がいないが、落ち込むことははい。そのことがお前を強くするんだ」

「奪われた人生が頭をかすめる。バカな選択肢は人生を破滅させる」

劇中にあったセリフです。こんな素敵な言葉をかけられても、主人公の胸中に響かなかった、もしくは、それほど深い闇が彼の心を支配していたのかと思ったら、とても切ないです。

結局、人を活かすのは人です。どういう人生を生きるのか、どういう人間関係を作るのかというのは自分次第。この映画を観て、まず自分が周囲に、そうありたいと思える姿を目指して接していかないといけないなぁ…と思わされました。