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怪怪怪怪物!のryacのレビュー・感想・評価

怪怪怪怪物!(2017年製作の映画)
4.7
新文芸坐オールナイトにて。最高かよ~!!!
今年ベスト級に好き。こんな映画を見落としていたとは……見れてよかったー!

「爆笑もののギャグ」と「胸糞悪くなるような人間描写」と「凄惨なゴアシーン」がそれぞれ入り乱れ、目まぐるしいほどのハイスピードなテンポ感で進行していく物語。

怪物と出会った不良少年たちはどうにかそれを撃退、むしろその後は少年たちが怪物を監禁し、蹂躙していく……という筋書き。
はじめはいじめられっ子だった主人公のリンシューウェイが不良メンバーに溶け込んでいく様子が印象的。最近では『バッド・ジーニアス』のバンクに近い人物だと思った。生真面目ゆえの危うさを持った少年。そんな彼が不慮仲間と一緒に笑いながら老人をおもちゃみたいに扱うシーンの恐ろしさ……!

言うことがそこはかとなくズレている担任教師やおそらく知能に障害を抱えているであろう店番の男、教室の外に締め出されている女生徒、なんだかよく分からない元軍人のおじさんなど、登場人物一人一人が尖りまくり。

メインとなる『怪物』の描写はオーソドックス(ただれた皮膚やむき出しの目玉、陽の光が弱点)だし、残酷なシーンで軽快な曲が流れる対位法が多様されていたり、目まぐるしく動くカメラワークなど、奇抜な作風ながらもB級感はなく、むしろ漂うのは一流の雰囲気。何が起こるか分からない、丁寧で秀逸でストーリーテリングのおかげで心底恐ろしかった。怪物そのものよりも主人公たちの方が怖くてヤバい。

ゴア描写も、熱したペンチで歯を1本ずつ引っこ抜くような地味ながらも物凄く嫌なやつから怪物が街中で大暴れするようなダイナミックなものもありバリエーション豊か。

あと、僕は『スワロウテイル』を生涯ベスト1の映画に挙げているのですが、そんな自分にとっては超超超超絶ショッキングなシーンが後半に……!

たぶんこの作品は同調圧力とか、その場の空気に呑まれることの危うさを描いた作品なんだと思う。
現代の社会問題をシナリオに盛り込むのは優秀なフィクションの常。まさに今作もその一本。
エンドロールでかかる、主人公の心情を表したような主題歌もよかった。
一番怖いのは「あの頃、君を追いかけた」の監督作ってこと。
あとタイトルが最高だよね。英題に至ってはmon mom mon mon monstersだよ。
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