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怪怪怪怪物!のsanbonのレビュー・感想・評価

怪怪怪怪物!(2017年製作の映画)
4.0
誰が死んでも一切悲しくならない、突き抜けた表現で描き切る「因果応報」系傑作エンタメ。

この作品を観てまず真っ先に感じた事は、非常に日本の「漫画的表現」に溢れた映画であったという事だ。

この作品は、学校ぐるみでイジメを黙認していたり、捕獲した怪物に対して拷問まがいの実験を楽しんだりと、いわゆる「胸糞」な要素をふんだんに取り入れた"過激"な作風となっているのだが、いかんせんそれが近年流行りに流行ってもはや飽和状態となっている「不条理系デスゲーム」の漫画のノリを彷彿とさせる演出や表現ばかりで、観ていて何故だか馴染み深い感覚に陥る。

しかもそれは、劇中に「NARUTO」の"我愛羅"や「ドラゴンボール」の"フリーザ"などをあざとく忍ばせてくるあたりからも、監督自ら日本の漫画からインスパイアを受けている事を暗に認めていると感じる程だ。

そしてこの見解が正しければ「この作品は"漫画を読むように気軽に楽しむ"のが正解だ」という"メッセージ"も兼ねているんじゃないかと思った。

それ程までにこの作品は、予備知識や雑念など全て取っ払って、頭を空っぽにして観る事をオススメしたくなる怪作なのだ。(怪怪怪怪物!だけに。)

また、タイトルからして非常に"チープなノリ"を漂わせる今作は、出演者達の演技からキャラクター設定から全てが"わざと過剰"に演出されており、リアリティラインからは"敢えて外して"製作されている。

それも、この作品が内包している"胸糞"要素から極力現実味を無くし、"より漫画的"に感じさせる為の配慮のように思えた。

そのおかげで、実際ならば観ていて楽しいものではない場面すら、しっかり"フィクションとして"受け入れられるようになっているのも策略としては上手いやり方だ。

また、この映画にはそのような過剰演出も相まってか、誰一人として感情移入出来る人物が登場しないのだが、"いつ誰が死ぬか分からない"ような死の雰囲気をすぐ近くに感じる今作に限っては逆にそれでいいのだ。

これは、今作における軽薄でぶっ飛んだ世界観を形作るうえで、かなり"重要な施策"であると言える。

何故なら、この作品が伝えたいのは"風刺"や"問題提起"などの"テーマ性"でも"陰鬱さ"やましてや"胸糞"でもない。

ただただ"非現実的な現実"の中で"アドレナリン"が溢れる"刺激的な映像"を楽しむ為"だけ"の、メッセージ性など度外視した"純度100%のエンターテインメント"であるからだ。

なので、この作品に"意味を求める"事は楽しさを半減させる行為となってしまう為、決して見方を間違わないよう気を付けなければならない。

確かに「イジメ」や「独居老人」など、社会問題をいくつか取り入れてはいるのだが、そこに引っかかってはダメなのだ。

それらは、あくまでこの"エキサイティング"で"軽薄"な世界を際立たせる為の"アイコン"でしかなく、そこに本質は無いのだから。

よりイメージを分かりやすくする為に、この感覚と近い作品が邦画にもある。

それは「中島哲也」監督の「告白」だ。

あれも、学園内での娘の死というセンセーショナルな事件を発端とした復讐劇だが、問題提起などは二の次の明確なエンターテインメント性を備えた作品となっている。

そんな告白も、ポップさに従事しつつ"アンリアル"な表現や演出をふんだんに使っては、現実的になり過ぎないよう絶妙に調整された"ストレスにならないレベル"でのグロテスクを完璧に表現してみせた素晴らしい傑作だ。

そして、今作も"ありえない"をいくつも盛り込んだうえで、残酷描写は極力画角の外で巻き起こすなどして、徹底してグロテスクになり過ぎず、かつアンリアルに努めて制作されている為、気分が悪くなる胸糞の一歩手前で踏みとどまれる。

これは"フィクションとしての強み"を非常に良く活かしたある意味"パワープレイ"だと思った。

特に顕著な場面としては「燃え盛る教師を眺める生徒達の反応」と「通学バスの中で怪物と対峙した際の態度」が挙げられる。

どちらのシーンも「死」についての観念がありえない程軽薄に描かれ、起きている出来事の重大性に対して"重み"を一切感じず、代わりにあるのは"現象"としての"高揚感"だけなのである。

これは本当に、漫画を読んでいる感覚と実にソックリだった。

また、各話の積み重ねで物語を紡いでいく漫画は、言ってしまえば"ぶつ切りの連続"であるが故に、1話につき最低1つは"山場"や"謎"など読者の興味を引きつける要素を必ず入れるなどして、テンポを崩さず人気を保ちながら進めていかなければいけない。

そして今作も、起承転結のような"場面転換"をリズミカルにテンポ良く展開する事に注力して製作されており、興味が途切れる隙も無く最後まで突っ走るし、その最中に起きる出来事には"メッセージ性"など感じさせるそぶりもなく、ひたすら山場と謎だけをテンション高めにクライマックスに向け引っ張っていくのだ。

だからこそ、最後のEDテーマが妙にカッコイイロックナンバーでもそのミスマッチ感が漫画的で逆にいいし、排他的だが一つ残らず結末を示して終わってくれるラストには、妙なカタルシスと笑みがこぼれでてしまうのだ。

いやー、ここまで絶妙なラインで"ポップさ"を守り抜いた胸糞映画は久々に観た気がする。

何事にも捉われずただただスカッとしたい方には是非オススメしたい一本だった。

※音声切替はオーディオコメンタリーのみ。吹替無し。