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忘れじの面影のpikaのレビュー・感想・評価

忘れじの面影(1948年製作の映画)
4.5
胸がベッシャベシャにつぶれた。つらい。。せつない。。少女漫画とフランス映画の融合みたいなフィクショナルっぷり。実際こんな片想いねーだろ、と思いつつもあるかもしれない、いやきっとある!と願ってしまうような純真な感情とリアリズム。相手あってこその愛ではあるが、愛は相手に期待するものではないという極論みたいなやつを美しいメロドラマで語る反面、そういった愛というものは本当に美しいものなのか、幸福なのであろうかとこちらに問うてくるような何とも言えない余韻が残る。
最初は本心のように見えていた歯の浮くような台詞が最後に戯言だったと気づく展開、愛する人を前にすると何も語れず手紙でようやく想いをぶちまけられる様など、情熱は言葉にならず、愛の言葉に想いは込められていないというあるあるのリアルが叙情的に攻撃してくる。ムードに流されドラマに泣かされるが笑ってしまうくらいシュール。人と関わらずには生きていけない世の中で愛が人生に及ぼす大きさをこれでもかと映し出す。描写の奥行きが凄い。奇妙なバランスが独特な魅力になってる。ノンストップフォーリンラブの末路。

ファーストショットから良い。字幕追えなくなるくらい終始画面が良い。
主演2人の演技が素晴らしく、別人が演じているのかってくらい時代ごとに演じ分けていて凄い。言葉なくとも表情で表現しきってしまうジョーン・フォンティン。ルイ・ジュールダンの青年期がイケメン過ぎてめちゃくちゃカッコいい。冷静に考えなくてもクソミソなダメ男なのに何故こんな奴に惚れてしまうのか、っつー説得力を物腰、仕草、イケてる顔面でウムを言わさず見せきっている。主演2人の存在感で多分に語らせ全く出しゃばらない演出が良い。ここぞというところでクローズアップを用いて、時を自然にジャンプさせ、描かれない年月を語り切る。大仰臭さは一切なくスマートでサラリとした演出が美麗な画面を引き立て内容に反して淡く切ないドラマに仕上げている。息子のくだり全部泣く。エンディングの静けさが悲しくてナイス。リベンジやったれ!!(T_T)傑作!
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