140字プロレス鶴見辰吾ジラ

リズと青い鳥の140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

リズと青い鳥(2018年製作の映画)
4.5
GW映画12番勝負【第6戦】
※GW中に800レビュー届くのか!?

``セッション``

「オレンジャーズ、全滅…」

2018年の邦画は
この3本がマストである。
~青春怪獣総進撃~
「ちはやふる 結」
~白石和彌、最新作~
「孤狼の血」
そして…
~荒れ狂うチャゼル世代~
【山田尚子最新作】
「リズと青い鳥」
である。

アニメ「響けユーフォニアム」のスピンオフ作品であるが、ひとつの独立した青春の成長しかけの歪な愛の形を描いている。

かつて音楽は闘いだととある映画に教えられて、勝手に別れを告げてしまった「響けユーフォニアム」から3年越しに、そうではないのだなと思い知らされた作品となった。

山田尚子vsダミアン・チャゼル
と世紀の一戦を見たい気持ちが…
理由は「セッション」のこともあるがムチを振るうような「動」の熱量でなく、会話の隙間や行動の合間に潜むものを「静」の熱量として重く激しく伝えていることに驚いた。そして「ラララン」のミュージカル描写のような、限定空間の使い方、今作で言えば「リズと青い鳥」の童話の限定空間のフェイズである。物語と切り離されているもののメタファーとしての役割と精神世界のように寄り添いある挿入、そして童話世界だけ本職声優でない本田望結を一人二役として起用していることにおけるダブルターンの重みを生み出している。そして何より階層を隔たせることでの作中内での住み分け、壁による精神的奥行きがもたらされている。

クライマックスに演奏という手法を「動」の熱量であるエモーショニックでスポーティブに描かず「静」のバイオレンスで焼き付け、さらに「かリオストロの城」のような哀しき解答と青春の再起動を詰め込まれ、見ている側は昂った想いでオーバードーズ必至である。

僅か90分のランニングタイムながら冒頭の登校後~音楽室に至るまでの、「静」の熱量は凄まじく、目線、歩き方の違い、目線の先と反復運動、そして上下の距離感まで「ドントブリーズ」以来に息することも憚れるほど映画の重力に締め上げらる至高の喜びと刹那さを孕み、それがときに狂気的なホラーのようにも頭を巡らせる。アニメとはいえ、京都アニメーションが会得した絵が演技することによるレンジの広がった演技幅に感銘するだけでなく、作品からのメタファーとして山田尚子という女性監督を鳥籠に入れておくに惜しいし、ダメージ覚悟で暴れさせてみたいという期待感をもたらした一作。

文句なし年間ベスト級!!