せーじ

リズと青い鳥のせーじのレビュー・感想・評価

リズと青い鳥(2018年製作の映画)
4.0
新宿ピカデリーで鑑賞。
当然のように満席で、男女比は8:2くらい。客層は明らかにそのスジの人達ばかりでした…って、新ピカなら当然か。

「聲の形」の山田尚子監督の最新作と聞いて興味があったものの、「響け!ユーフォニアム」シリーズはTVアニメも含めて全くの未見。なので観ても大丈夫なのか二の足を踏んでいたのだけれども、とある人の絶賛レビューを読んで鑑賞を決意。
結果、確かに一見さんでも大丈夫でした。
ただ…なんだろう、なんだかちょっとモヤモヤしてしまったんですよね。

とはいえ、基本的には物凄くよく出来ている作品であるのは間違いない。
「聲の形」同様、随所に映画的な仕掛けが施されており、キャラクターのアクションで心情を表現していくという映画的な手法の完成度がより増しているように感じられた。特に、終盤で主人公達二人の立ち位置が入れ替わる展開が実に鮮やかで「うおお、なるほど!」と、おもわず目を見張らずにはいられなかった。それだけでも既に5点中4点は出ているのだけれど、モヤモヤしたのはそれらが炸裂している"リアルシーケンス"の部分ではなく、要所で挟まれる"童話シーケンス"が明らかにそれに負けているように見えてしまったからなのだと思う。

もちろん、つくり手は意図をもってあのように描いたのだと思うが、自分にはあの一連の場面がのっぺりしているように見えてしまって、"リアルシーケンス"でのあの繊細な描写と食い合わせが良くないように感じてしまった。単に「童話の中の世界」であるということ以上の描き方が成されていないというのは、非常に、非常に勿体ないと思う。
それゆえ、リアルシーケンスの方でも、クライマックスの合奏シーンが、単に演奏をしただけになってしまっているのも残念。そこは派手にやる必要はないけれども、主人公達二人のイマジネーションがリアルを飛び越えて"joint"する瞬間をきちんと描くべきだろう。
現実とイマジネーションの世界とが同居する世界を破綻なく描くことが出来るのが、アニメーションの素晴らしいところなのに、そこをオミットしてしまうというのは、本当に、本当に勿体ない。

ただ、そこまでやってしまうと、明らかにスピンオフ作品としては突き抜け過ぎたものになってしまうのだろうなとも思うので、これはこれで仕方がなかったのかもしれない。ある意味、ステロタイプな演出だとも思うし…というのが、おそらくモヤモヤの全貌なのだと思います。
多感な年頃の女の子たちならではの悩みと成長を、鮮やかに描いた秀作ではありますので、皆様ぜひぜひ。
一見さんでもおすすめです。
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