キー坊

リズと青い鳥のキー坊のレビュー・感想・評価

リズと青い鳥(2018年製作の映画)
5.0
とっても切なく儚い、女の子二人の青春の1ページを描いた作品

北宇治高校で吹奏楽部に属するオーボエの鎧塚みぞれと、フルートの傘木希美
二人は中学の頃からずっと一緒に音楽をやり続けてきて、高校最後のコンクールで「リズと青い鳥」という曲を演奏することになった
表題曲の内容を見て、まるで自分たち二人みたいな物語だと重ね合わせ、練習を積んでいくがなんだか調子が合わない
音楽や進路、友情においてそれぞれの想いで悩める二人

なんて繊細な映画なのか…
二人の1つ1つの動きにも感情が込められていて目を離す隙がない
二人の距離感や会話の間、その狭間に流れる音楽も揺れ動く想いが描かれている

ずっと追いかけてきた人とずっといたくて音楽で繋ぎ止めたいみぞれ
だけど希美は心のどこかで才能の違いに惨めさを感じてて、それでも付いて来るみぞれに甘えて音楽を続けている
お互いに大切な存在であるはずなのに、どこか気持ちのズレがあり反りが合わない

だけど進路を決める際にお互いが気付く
自分が本当にやりたいこと、やれること、自分にはどれだけの可能性がありどこまで行けるのか
リズが青い鳥の可能性を奪わないためにと広い世界へ羽ばたかせたように、とても大切な存在を、大好きな存在をどうしても手離さなければいけない
二人とも未来に進むために決断しなければいけない

みぞれの決断が演奏に現れた瞬間に希美も気づく
籠の中に繋ぎ止めていた青い鳥を解き放つ時なんだと
自由に羽ばたかせ、可能性を広げてあげる時なんだと…

もう二人の想いがうまく噛み合わないのに、その成長の儚さとやっと噛み合ってく気持ちが泣ける泣ける…
最後の演奏シーンは本当に泣ける…
口下手で気持ちをうまく表現できないみぞれにとって希美は音楽に導いてくれたヒーローなんですよね
希美は人当たりも良くて誰とでも仲良くなれるけど、それ故に人の気持ちや話を適当に終わらせてしまうところがある
それでもみぞれにとっては希美は唯一の心の拠り所で大切な存在なんですよね…

愛の比重はみぞれが圧倒的に重いんだけど、希美は本当はどうなんだろうなぁ
好きな部分は1つしか言わなかったけど
本当にそうなのかもしれないけど、進んで貰いたいからあえて1つしか言わなかったとも思えるし
初めて話しかけた時の事をずっと覚えているあたり、僕は後者だと思いたいな

必要最低限な言葉と表現だけで、ここまで丁寧に二人の少女の気持ちを表すのはある意味アニメでしか出来ないと思うし、また京都アニメーションだから出来る技だと思います
一つの動きも一つの音も一つの音楽も全部に意味が込められてます
音楽も申し分ない、静かな雰囲気があるけど映画館で見ないと勿体ない
百合成分も満載、揺れ動く青春のひと時をこれでもかと堪能しました!
傑作!!
キー坊

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