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リズと青い鳥のtakのレビュー・感想・評価

リズと青い鳥(2018年製作の映画)
3.8
仲良しの誰かと一緒にいられる心地よさ。学生の頃、それはいつまでも続くと思っていた。それぞれに選ぶ道があるのだから、そんなことないのに。「あいつが行くならオレもそっちでいいかな」そんな気持ちが進路決定を揺れ動かした経験、ないだろか。「リズと青い鳥」について、"男子には理解できない女子の連帯感"めいた感想をちょくちょく見かけるが、これは男子も女子もなく誰もがあの頃感じてたことだと思うのだ。そりゃまあ、「大好きのハグ」や「ハッピーアイスクリーム♡」は男子には無理だろうけどねww

テレビアニメ「響け!ユーフォニアム」のスピンオフとして制作された本作。オーボエ担当のみぞれとフルート担当の希美。中学時代に希美が内気だったみぞれに声をかけてくれたことで友人になった二人。高校最後の吹奏楽コンクール自由曲「リズと青い鳥」で、二人にはソロの掛け合いがある。この曲の元となる童話には、青い鳥と少女の別れが描かれる。卒業後の進路に揺れる二人の心、希美を失いたくないみぞれの気持ちが童話の物語に重なり、演奏をかき乱す。その葛藤と二人の成長が繊細な描写で描かれる。

テレビシリーズでも冴え渡っていた京都アニメーションの細やかな仕事。山田尚子監督の手にかかるとどこにでもある日常の出来事が、とても愛おしい時間に変わる。「けいおん!」も「たまこまーけっと」もそうだったように。みぞれと希美の気迫の込もった演奏をみせるクライマックス。彼女たちの息遣いや足音までもが、気持ちを表現する見事な演出。とにかく"音"で聴かせる作品だ。演奏の良し悪しなんてわかんない…という人でも、あの演奏シーンは"なんかすごい"とは感じられるのではなかろうか。

これまでの登場人物たちは脇役だけど、みぞれと希美の個人的感情の物語をうまく彩る役割を果たしている。特に3年生で副部長になったユーフォニアムの中川夏紀が、やさぐれてた1期と違っていい存在感。主役の二人を中学時代から知る立場として、ストーリーに深みを与えてくれる。トランペットの高坂麗奈は、またも物語の火付け役でカッコいい。元吹奏楽部の僕としては、同じトロンボーン担当の塚本くんを応援したい。だってあの頃、僕もユーフォの女子に恋していたから(笑)そっちのスピンオフはないだろか。
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