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ラーメンヘッズのTSのレビュー・感想・評価

ラーメンヘッズ(2017年製作の映画)
4.2
【ラーメン一筋の男の生き様】88点
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監督:重乃康紀
製作国:日本
ジャンル:ドキュメンタリー
収録時間:93分
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2018年劇場鑑賞13本目。
こういうドキュメンタリー映画にはめっぽう弱いのでかなり甘い採点となっています。ご了承ください。今作を見る前に、もしくは見た後でも良いので『ラーメンより大切なもの』を鑑賞することをオススメします。何故なら今作の主人公である店主・富田治はラーメンの神さまと謳われる山岸一雄の弟子だからです。四年連続日本一に輝いた彼の店「とみ田」を中心に追っていくラーメンドキュメンタリー。見れば間違いなく腹は減りますし、ラーメン道を極めし男の生き様を垣間見れる熱い作品でもあります。

僕もラーメンはかなり好きなタチなのですが、専用の雑誌を持って名店を回る、ということはしない人です。世に有名なラーメン店にはほとんどいけてませんでして、いつかは巡ってみたいなと思っている所存です。さて、今作は千葉県松戸市にある「とみ田」の営業シーンを一日中、そして店主・富田治の拘りをふんだんに見せた作品であります。スープから麺、トッピング具材のあらゆるものが自家製。ラーメンとは丼一杯に秘められた芸術作品の色合いもあり、この一杯を仕上げるには相当な修行が必要である模様。元ヤンキーであった富田に憧れて弟子入りする人も少なくはなく、実際にラーメンの作り方を教えてもらえるわけではないのですが、黙々と彼の背中を見ていきます。本人も言っていますが、良い意味でラーメンバカ。こういう名店に来る客もラーメンバカであるため、そのラーメンバカを唸らせるには、作り手もバカでなければならない。とんでもないですが至極真っ当な意見でありましょう。

「とみ田」以外にも、屋台の「井上」や、隠れ名店「福寿」など、さまざまなジャンルのラーメンを扱う名店のドキュメンタリーが収録されています。特に「福寿」の店主が放つ言葉には感動させられました。ラーメンという食べ物は、美味を求めて生まれた食べ物ではないということ。戦後、腹を空かせた人々が安価ですぐ食べられるようにと、そういう慈善的な思想の中で生まれた大変心温かい食べ物なのです。そしてこれはラーメンに限ったことではないですが、自分が作ったもので人が笑顔になる。とてもステキな職業であると感じました。

店主の富田もまた無類のラーメン好きであり、休日には他店のラーメンを食べ漁るほど。面白かったのが、あの某ラーメン店を富田が一番好きであるということ。その感想もまた面白い。スープがどうとか具材がどうとかではなく、もう次元が違う、何かわからないけど病みつきになってしまう味、だという。これはそのラーメンを食べたことがあるので妙に納得させられました笑

ラーメンの歴史をアニメーションで追うのも面白かったですし、なによりもラーメン一筋で生きている男の立派な生き様を垣間見れたのが良かったです。昨今では、仕事を嫌々しながら生きている人が多いかもしれませんが、果たしてそれはあるべき姿なのでしょうか。仕事が楽しくて仕方ない。その仕事を充実させるために休暇を過ごす。そんな世の中になってほしいなと個人的には思ってしまう次第です。

微妙だったのが、監督のナレーション。やや悪意のある表現がたまにありましたので、個人的には失礼に値するなあとか思ったり。また「〜とでも言うのだろうか」なんて某ホラードキュメンタリーの常套文句ですから思わず笑ってしまいました。絶対に意識されたのでしょう。

ちなみに、映画館によるでしょうが、劇場に入る前に特典として「とみ田」のカップ麺を頂きました笑 特典でカップ麺をもらえるなんて恐らく最初で最後でしょう。ラーメン愛に溢れたドキュメンタリーでした。個人的には大好きな作品でした。
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