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あさがおと加瀬さん。のmitakosamaのレビュー・感想・評価

あさがおと加瀬さん。(2017年製作の映画)
3.5
同級生が男子高校生同士の恋愛劇だったのに対し、こちらは女子高生同士の百合もの。
ただ大きく違うのが、同級生が付き合うまでの恋愛模様を描いたのに対し、今作は冒頭から既に付き合っている。
勿論尺が短いことも理由の一つだろうが、それ以上に今作が女同士で付き合っている高校生の“日常系”作品だということがポイントなのだと思う。

園芸に興味があるオットリ系少女の山田と、陸上エースのスタイル抜群アスリート加瀬さんの二人。
彼女等が付き合う上で、同性愛とであることの社会的な障害は一切描写されない。同性で付き合うことの葛藤や社会の奇異な視線からの隠れる息苦しさなどの、同性愛を扱った映画で扱われる困難はまるで無い。

今、ディズニーは「同性愛者のプリンセスを出すべきだ」という論調を一部ファンから突きつけられているんだよね。
初期は白人金髪のプリンセスのみだったが、今は黒人や東洋人、ネイティブアメリカン、サモアンなど人種が多様化してきた。同じように「セクシャルマイノリティも平等に扱うべきだ」という意見が増えてきている。

もしディズニーがレズビアンのプリンセスを出せば相当ニュースになるだろう。
でも日本のアニメって今作みたいな作品が普通に消費されているんだよね。これって実はガラパゴス化した日本アニメの最大の強みなのではないか、と思っている。
だって、同性愛の権利を獲得する為の作品じゃなく、既に同性愛が当たり前のように存在している上での物語だからね。
仮に今作を海外のゲイ&レズビアン映画祭に出したら相当話題になるのではないか?そして日本がとても同性愛にオープンな国だと勘違いされるであろうよ。

だからこそ今作は同性愛を取り巻く社会的に困難な状況からは無縁の映画に出来上がってる。山田と加瀬さんがお互いの気持ちを確かめ合い、一喜一憂する様をオモシロ可笑しく、切なくも可愛らしく描かれていることに撤している。
映画としてはクライマックスに向けての大きなカタルシスが無いので、物足りないという意見もあるかも知れない。だがむしろ普通の日常を描ききったからこそこの作品は価値があるのではなかろうか?

そしてエンディング曲は“明日への扉”の声優によるカバー。これがまた爽やかで実に物語の〆に適切。観賞後の清涼感がたまらない出来となっているわ。
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