にく

らいおんウーマンのにくのレビュー・感想・評価

らいおんウーマン(2016年製作の映画)
2.8
ノルウェーの片田舎の初老の駅長のもとに、母を犠牲にして生まれたエヴァは多毛症であった。文字通り過保護な父のもと、好奇の目にさらされながら、不満を抱えながらも、すれずに成長する娘であったが…。
 って、いや、皆さんが仰るように、終盤、無理あり過ぎでしょう。実話ではなく小説が原作のようだが、エヴァは、学校で学ばずとも数学が得意だ、くらいの話で、後にソルボンヌの階段教室でラマヌジャンについて講義するほどの数学的才能を彼女が持っていたようには見えなかった、というか、そのようには描けていなかった。
 P・T・バーナムがモデルであろう見せ物興行師も出てくるが、20世紀前半に、バーナムのように「奇形」者に理解がある開明的な興行師がそうそういたとも思えない。
 せっかくの駅という舞台(父がその住み込みの駅長)という設定もそれほど活かされない。この父娘が、旅行や保養のために駅を離れる程度で、それ以外は駅を離れることができない、動けないというシチュエーション(列車で移動できるものへの憧憬、外の世界への渇望)をもっと活用すべき。
 せっかく蒸気機関車に乗っても疾走感に欠けるのでドラマが盛り上がらない。ライオンのような姿ばかりでなく、エヴァのライオンのような咆哮をこそ(うちに秘められた思いの爆発的表出として)、汽笛と蒸気の噴出と列車の速度とに重ねなければならなかった。それこそルノワールの『獣人』の怒れるジャン・ギャバンの如く。
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