dita

スーパーシチズン 超級大国民のditaのレビュー・感想・評価

3.5
@シネ・ヌーヴォ ~台湾巨匠傑作選2018~

人ってたぶん充足感より後悔の気持ちを持ち続ける生き物なんだと思う。あの日から止まってしまった老人の人生が過ぎゆく時間に追い付くことは決してない。辿り着いた贖罪の場で発したことばに、灯した蝋燭に込めた思いが届くことを切に祈る。

今ここにいるわたしを何故見ないの、今ここにいる家族を何故大切にしないの、という娘の気持ちはわたしの親に対する気持ちそのものだった。
余裕がない、仕方がない、そんなことは老人も娘もきっとわかっている。仕方がなかったと自分に言い聞かせ、前を向けたらどんなに楽だろう。
でも、でも、やっぱり人間はどうしようもなく過去に、後悔に囚われる生き物だ。折り合いをつけるには重すぎた出来事。政治によって奪われた時間と命。自分だけが歳を取ってしまった、自分だけが生き残ってしまった。贖罪の5文字の中にはそんなことばも含まれていたのだと思う。

奪われた時間や奪われた命が戻ることは決してない。だからこそ権力はそれを間違った思想や方法で奪ってはいけないという当たり前のことを当たり前に思えれば悲しい出来事は少しでも減るし、時には時間に解決させることも出来るかもしれない。
どうか、当たり前に生きる権利を奪わないでください。個人・政治・思想、あなたたちが奪っていい命なんてこの世にはひとつもないのだから。
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