円柱野郎

妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢの円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

家族3世代のバタバタを描いた喜劇映画の3作目。
平田家長男・幸之助(西村まさ彦)の妻・史枝(夏川結衣)は、専業主婦として常日頃から家事をこなして家族の生活を支えていたが、そんなある日事件が発生する。

前作は家族の中の“老人社会”がテーマだったが、本作は“妻”がテーマ。
特にこの場合は“専業主婦”だよな。
ストーリー的には前作の様に前後半で幕を分けることもなく史枝の心情を背骨にして物語が進むので、個人的にはこちらの構成の方が一つの物語としてのまとまり感があって好みでした。

奥さんに家を守ってもらっていることも忘れて心無い言葉をぶつける幸之助の姿には、さすがに彼の言動はケツの穴が小さすぎて「そりゃこんな良い奥さんでも家出するわ」と納得してしまう。
そこに至るまでの日常描写がちゃんと組み立てられているので、観客は史枝さんの心情に共感してしまうわけだ。
この辺の脚本の説得力はさすがだよなあ。
現代の大船調とでもいうか、いや大船調の生き字引である山田洋次の作品なわけだから紛う事無き大船調の系統作品なわけで、「妻の家出」を描きながらシリアスになりすぎず、さりとてコメディにも振りすぎない日常の中の喜劇がとてもよく描かれていると思った。
本作での幸之助は憎まれ役になってしまう立場ではあるが、どこかしら不器用さをにじませて憎めない西村まさ彦の演技もさすが。
それを脇で支えるレギュラー出演陣も息がピッタリで実に良いね。

現代社会は女性の社会進出が当たり前の世の中になった。
一方で専業主婦という考え方が旧態依然としているのかというと、個人的にはそうは思わない。
平田家次男の庄太(妻夫木聡)が言うように家族というまとまりの中での「役割分担」なんだろうし、それが日本的な家族観で良いじゃないかと思っている。
そこはお互い感謝をしましょうね、そこに気が付きましょうね、というこの映画のメッセージは明白だ。

今回の物語の発端は空き巣に入られたことかもしれないけど、家出の原因は幸之助の態度が問題なのは間違いない。
ただ、山田洋次監督は「仕事で退任を果たし、くたびれ果てて我が家に帰った矢先のことで幸之助も運が悪かった」と同情的な発言もしているね。
観客は史枝さんの視点で観てしまうから幸之助へ一方的にヘイトを集めてしまうけど、続編があるならば、家族のために必死になって働いている幸之助の姿も描いて欲しいなと思った次第。