ダウンセット

アクト・オブ・キリング オリジナル全長版のダウンセットのレビュー・感想・評価

4.5
1965年9月30日、インドネシア。陸軍左派が起こしたクーデターをきっかけに共産党支持者とされた人々、約100万人以上が虐殺される。以後、タブーとされた真実の物語が…。

これは凄い。当時の、実際の加害者が登場。映画撮影を進めていくうちに「1000人以上は殺した」と豪語する殺人部隊のリーダー、アンワル・コンゴの感情が変化していく。
『ゆきゆきて、神軍』の奥崎謙三を遥かに凌ぐサイコパスなアンワル。しかも民主化の英雄として今も大手を振って街を闊歩。アンワルの仲間達も大概で、ワルなオーラ全開。今現在も、この殺人部隊がインドネシア政権の中枢にいる現実の凄さ。
結果的に安い賃金や資源に目をつけた日本を含む先進国の犠牲になった人々。アンワル自身も自分がしでかした罪と対峙できず悪夢にうなされる。
当たり前の日常は、当たり前じゃない日常の上に成り立っている事を考えるきっかけを与えてくれる。
倫理観が崩壊する。勝者が歴史を語り、敗者は沈黙する。多様性を叫んだところで、その国の経済が根底から覆されない程度でしか認められない。同調圧力は歪んだ正義を拡大させて自らの首を絞めつけることになるだろう。アンワルの様に。

名言(迷言)オンパレードな本作。究極は、コレ。「お前には地獄でも、俺には天国だ」