140字プロレス鶴見辰吾ジラ

予兆 散歩する侵略者 劇場版の140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

4.4
”染谷ジャンプ”

劇中、ハイエース?のバックドアを染谷将太が閉めるシーンがあるのですが、焦りながらジャンプして閉めることとなるその可愛さが、下手すると今作のベストシーンなのではないか?と思ってしまいました。

はてさて黒澤清の「散歩する侵略者」のスピンオフドラマでありまして、黒沢清ワールドを惜しみなく繰り出して、かつ劇場公開の「散歩する侵略者」以上にリミットを外したオカルティックでシュールでスリリングな展開を魅せています。「散歩する侵略者」は、”興行収入”という概念をうっかり奪い忘れていたようで、何かとエンターテイメント性あるスポットの配置がありましたが、スピンオフドラマということでリミットを外したカメラ回し、照明の暗転と光の差し込み、堪らないレベルのカーテン等の遮蔽物とそよぐ風の効果演出。お笑い芸人が地上波でやる芸の限度や節度があるように、単独ライブでの破壊力を、黒沢清版で味わった印象です。

”侵略者”が”世界征服”のために人間の”概念”を奪うというSFとしての趣がありながら、概念を奪う技が額にピンと指を当てるだけで、かつそのあと効果音すら皆無で「うわ!こうゆう感覚なんだ~」とシュールなコントレベルのプチ侵略シーンを、ここまで格好良く描けることに関して驚くしかありません。

140分超えのランニングタイムにオカルト要素から、嵐の前のワクワク感と着実で確実な不穏感を黒沢清ギミックの惜しみない登用によりエネルギッシュにスタイリッシュにシュールにファニーに描いてくるのだから、多少は好きな監督だから評価に傾斜かけてしまっていても、「これぞ映画による侵略だ!」と意味不明な落としどころに自分の感情を持っていくに足る芸風を肌で感じられました。