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予兆 散歩する侵略者 劇場版のmrhsのレビュー・感想・評価

4.0
極めてシンプルなロングショットとシンメトリックな構図を観ただけで、黒沢清は抜きん出た才能を持つ監督だと再認識。

いかにも黒沢清的な記号を組み合わせただけの作品と言ってしまえば、それまでの様な気もするが、それが『ダゲレオタイプの女』と同様に非常に上手くハマっている印象。

原理的にカメラは人の内面を映せない=カメラは内面が引き起こした結果としてのアクション(≒外見)しか映せないと黒沢清は述べていた(はず。うろ覚えの引用)。あるいはトラウマの原因を述べて極めて説明的に終わってしまう映画への批判もしていたか。

確かにこの作品からも『キュア』と同様にいくらでも観念的に処理できそうな問題(侵略者が言語化された概念を奪う!)を決して深く掘り下げはしない黒沢清独特の信念が感じられる。

ちなみに脚本が高橋洋だからか、彼が脚本を手がけた怪作『発狂した唇』とほとんどプロットが一緒なのだが、2時間半近い時間が全く苦痛に感じられないのは彼のユーモアセンスによるところも大きいのかもしれない。
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