ぺピノ

妻の愛、娘の時のぺピノのレビュー・感想・評価

妻の愛、娘の時(2017年製作の映画)
4.8
東京フィルメックスにて。

こんなに良いとは。今年観た映画の中でベスト級。
日本公開しないなんてありえないから頼む、どこかの配給会社。

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夫婦の物語。親子の物語。愛の物語。都市と田舎の物語。コミュニティの物語。生徒と教師の物語。メディアの物語。貧困の物語。移ろいの物語。希望を抱き続ける物語。始まりの物語。

これだけの濃密なストーリーを、人生を、過不足なく、、かなりのユーモアを込めて、二時間にまとめるなんて、、本当にすごい、、、
しかも監督兼主演、、完全に惚れました、シルビア・チャン。。。

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映画はシルビア・チャン演じるHui Yingが母親を看取るシーンから始まる。葬儀も終わり、母親の亡骸を自分の住む都会に埋葬し、そして先に田舎に作っていた父の墓も母と同じ都会の墓に移そうとする。しかしその田舎の村には、父と昔結婚し長年帰郷を待ち続けていたというお婆さんが墓を守っていて、、、

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自分は祖母を亡くしたばかりなので、最初のシーンから「うお、悲しいシーンか、辛いぞ」と思いきや、おばあちゃんが今際の際に思い描く心象がとても楽しそうで軽快で、そんなおばあちゃんを前にしても娘と孫が口論するシーンがユーモアに溢れてて、出だしから持っていかれた。

寂しいのにどこか可笑しい。
父の田舎に帰るシーンもそう。墓を身をていして守るおばあちゃんの姿が、本当なら辛いシーンなはずなのにとても笑える。

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こんな感じで複数の感情が同居するし、複数の題材が同時進行する。

母親と娘の物語を描きながらそれは一面において夫婦の問題でもあり、一面において人を信じることの問題でもある。

妾と本妻の物語でありながら、都市と田舎の物語であり、意地と和解の物語でもあり、血縁と地縁の物語でもある。

愛する二人の問題でありながら、夢を追うことの物語であれば、待ち続ける物語でもあり、場所的時間的にうつろう物語でもある。

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これだけの物語を、感情を、相補的に絡めつつ、ラストに全て収束して発散する。これ、映画として本当に最高だと思う。

いろんな感情がこみ上げてなんだか言葉がまとまらないけど、それがまさに人生だし、この映画だな。

人生の節目できっと何度もこの映画のことを思うだろうな。共に生きるぞ。
ぺピノ

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