MasaichiYaguchi

劇場版 夏目友人帳 ~うつせみに結ぶ~のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.8
手塚治虫さんの「どろろ」では主人公の一人・百鬼丸が妖怪と戦うことで自分の身体を取り戻していくのがおどろおどろしく描かれているが、緑川ゆきさんの人気コミック及びアニメーション化したテレビドラマ版、そして本作の劇場版では主人公・夏目貴志が時に戦うこともあるが、妖怪と関わる中で逆にそれらに名前を返し、そうすることで祖母・夏目レイコの記憶と共に自分自身を見出す様が温かく描かれる。
テレビアニメシリーズが放送されて10年が経過し、満を持しての劇場版公開ということになるが、「夏目友人帳」の原作やアニメを知らない人が本作を観たら、「友人帳」とはとか、登場人物の相関関係、藤原滋・塔子夫妻や友人たち、多軌透、田沼要、名取周一、北本篤史、西村悟との馴れ初めや関係性、そしてキーキャラクターであるニャンコ先生(斑)と祖母・夏目レイコとの経緯が触る程度にしか紹介されていないので戸惑うかもしれない。
一見、原作やアニメファン向けの劇場版のように思われる本作だが、初めての人にとって興味を持てる「入口」となるように、敢えて詳細な概要紹介をしていないような気がする。
だからさり気無い形で、祖母レイコの若かりし頃のエピソードと高校生である主人公と周囲の人々との話を対比させたり、リンクさせることでこの2人の能力者の人となりを浮き彫りにしている。
それにしても主人公・夏目貴志を食う程の存在、自称貴志の「用心棒」ニャンコ先生のキュートさや、斑になった時の圧倒的な強さ、カッコ良さ、そのギャップの妙が作品に溢れていて魅了されてしまう。