ノラネコの呑んで観るシネマ

天命の城のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

天命の城(2017年製作の映画)
4.4
17世紀、勃興する清が朝鮮を攻めた「丙子の役」の一ヶ月間を描く重厚な時代劇。
「トガニ」から「怪しい彼女」まで演出の振り幅が凄いファン・ドンヒョク、今回は超真面目モード。
山城に領民と共に立てこもる朝鮮軍が対峙するのは、10倍の兵力と最新兵器で武装した強大な帝国だ。
戦況は絶対不利。
王に助言するのは、屈辱を耐え降伏するべしと主張するイ・ビョンホンと、徹底抗戦して大義を貫くべしとするキム・ユンソク。
どちらもそれぞれの立場で正論。
ここに描かれるのは亡国の危機に追い込まれた時、リーダーはどうあるべきなのかと言う選択の物語。
優先させるべきは王の自尊心か、人々の命か。
清軍の通訳が朝鮮で人間扱いされなかった賤民階級の出身だったり、朝鮮軍に徴用された庶民の扱いが酷かったり、権力に対する視線は辛辣だ。
400年前の、結末がわかっている話だが、現在の世界に置き換えても色々示唆するものが多い。
そもそも朝鮮が、清に滅ぼされかかってる明に対する義理に拘ったことから招いた事態。
朝鮮半島の地政学的現実は、実は当時とあんまり変わってない。
だからこそ、本作が時代劇という非日常性を超えて現在に響くのだろう。
優れたポリティカル・サスペンスだ。