ブルームーン男爵

天命の城のブルームーン男爵のレビュー・感想・評価

天命の城(2017年製作の映画)
3.9
朝鮮は大国に翻弄され、中国の属邦だった時期も長い弱小国でした。朝鮮が生き残るには事大主義にならざるを得ず、本映画の時期は明と清のどちらに付くべきかで揺れ動いていました。

結局、小国の朝鮮が清の侵攻を防げるわけもなく、清に隷従し生き延びることを朝鮮王は選ぶわけです。王は、平民の服を着せられ、三跪九叩頭の礼といって、九回も頭を地面に擦り付けて清に忠誠を誓いました。以後、李氏朝鮮は清の使節を、王が直々にこの礼で迎えることになります。

本映画は大国に隷従して生き延びるしかなかった小国朝鮮の悲哀を、よく描いています。

小中華思想よろしく異民族の清を野蛮に描き、儒教文化よろしく民は虐げられ、文官の方が地位が高く武官は粗野に描かれるなど、さまざまな点に朝鮮における思想を見て取れ、興味深いです。

史実性は一部差し引かなければならないものの、全体的に映画としての完成度は高く、役者の演技力や映像などはよく出来ています。韓国史に興味がある人は必見でしょう。