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マスカレード・ホテルのマングースOLのレビュー・感想・評価

マスカレード・ホテル(2019年製作の映画)
3.7
🖋あらすじ
都内で発生した3件の殺人事件。現場にはいずれも不可解な数字の羅列が残されていたことから、連続殺人事件として捜査が開始される。警視庁捜査一課のエリート刑事・新田浩介は、その数字が次の犯行場所を予告していること、そしてホテル・コルテシア東京が4件目の犯行場所になることを突き止める。犯人を見つけるためホテルのフロントクラークに成りすまして潜入捜査に乗り出した新田は、教育係である優秀なフロントクラーク・山岸尚美と衝突を繰り返しながら、事件の真相に近づいていく。

「客、ではなく、お客様です」

🖋感想&考察 ⚠️ネタバレ注意⚠️
さて、東野圭吾が原作ということで、私個人的には面白かった。刑事の新田と一流のフロントクラークである山岸の正反対さ加減も然り、ホテルで日々起こる小さな事件を解決していきながら二人が成長する姿も面白い。そして一見関係なさそうな一つ一つの事件での経験が伏線となり、グランドホテル形式で線と線が繋がっていく様はお見事。映像化すると少し物足りなくなってしまいそうな内容だと思うが、それをホテルの豪華絢爛さでカバーしている。
キムタクの演技が同じ……というお決まりの意見もあるが、「検察側の罪人」を見る限りきちんと演じ分けはしているし、正直批判したいだけでは、とキムタクに同情せざるを得ない。ハマり役であったと思うし、ボサボサ頭の刑事からぴっちりセットさせたフロントクラークになるところは素直に格好いい。

犯人について、様々な意見があるとは思うが、恐らく小説で読めばもっと納得感があったのだろうという印象だった。
映像で観るコンテンツにはどうしても「派手っぷり」を求めてしまう。伏線に伏線を重ね、回収も鮮やかであったために、犯人の正体と真相や動機について物足りないと感じてしまうのは致し方ない。少し無理矢理な印象や理不尽すぎるとも思ったが、人の殺意とはどこで生まれるのか分からない、ホテルマンとしての正義が誰かにとっての憎悪の火種になることもある、という対比にも感じたし、タイトルにもある「仮面」という一貫したテーマには通ずるものがあるだろう。一度解決したと思われた客の仮面の下に潜んだ、歪んだ憎悪の感情。仮面を剥がそうとはしないホテルマンだけでは解決出来なかったであろう事件を、「仮面を剥がす」ことが仕事である刑事の新田が解決する。個人的には鮮やかな着地だと感じたし、流石は東野圭吾だなあ……などと思ってしまった。だが、最近ではミステリーであっても派手な展開が多いので、好みによってはハマらないこともあることは納得である。
たまにはいいホテルに泊まりたくなる、そんな気持ちのいいラスト。