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マスカレード・ホテルのよーだ育休準備中のレビュー・感想・評価

マスカレード・ホテル(2019年製作の映画)
3.0
東京都内で三件の殺人事件が相次いで発生した。いずれの事件現場にも『次の事件現場を示す座標』が残されていたことから、警察は同一犯による連続殺人事件であると断定。第四の事件発生を未然に防いでホシをあげるべく、次の事件が起こると目される《ホテル コルテシア東京》への潜入捜査を開始する。


◆ホテルマン×ポリスマン

東野圭吾による同名の原作小説を映像化した作品。原作は未読ですが、東野圭吾っぽさは随所に見受けられました。

今作は一流ホテルを舞台に繰り広げられる群像劇。警視庁捜査一課の刑事である新田浩介(木村拓哉)と、ホテル コルテシア東京のフロントクラーク山岸尚美(長澤まさみ)の凸凹バディが、《曲者だらけのお客様たち》を華麗に(?)捌きながら《連続殺人事件の解決》を目指すというもの。正義感が強く、ただでさえキレやすいという新田が、《ルールはお客様が作るもの》という信条を持つ山岸の下で、歯を食いしばりながら捜査のために一流ホテルマンに扮して推理をめぐらせます。

《お客様の安全が第一》を貫く山岸と《犯人逮捕の為にリスクはやむなし》という考えの新田。正反対の価値観を持つ二人がお互いを認め合っていく姿はとても良かった。劇中で『君が一流である事はわかる。』という台詞が(お客様の台詞でしたが)ありました。考え方の異なる二人でしたが、二人とも《洗練されたプロ意識》と《場数を踏んで練磨された業》がありました。なればこそ、お互いを信頼する事ができ、業務倫理を逸脱する行為(捜査情報を漏らす、危険と知りながら黙認する)にまで至ったのだと思います。一流のミステリ作品である前に、超一流のお仕事ムービーでした。


◆マスカレード×ホテル

ーお客様は仮面を被ってやってくる。

まぁ、素性が知れないという意味ではそうなんでしょうな。僕は『仮面舞踏会を楽しもう』なんてか小洒落た気持ちでホテルに宿泊した事は無いので共感はできませんでした。こんな高級ホテルとなったら尚のこと『ば、場違いじゃないかな…?』といつも以上に背筋をピンと伸ばしてしまいます。テンション訳わかんないモードなので、ピシッとしたフロントの人から急に声を掛けられようものならキョドって何をしゃべり出すかわかったもんじゃない。庶民くさくてすいません。(田舎く埼玉出身なもので。)

お金持ちのハイソな皆様は、そんな事が無いのでしょうが、偉そうにする人は苦手だな。仮面を被っている事をいいことに横暴な振る舞いをするのは【旅の恥はかき捨て根性】が滲み出てる感じがするし、なんなら【サイゼリヤのウェイティングリストに『フリーザ様』とか書いちゃう高校生】とあんまり変わらない気がする。

今作ではそんな愉快なお客様たちを豪華キャストが演じています。バスローブカウンター(失敗)おじさんに高嶋政宏。ご指名因縁ネチネチおじさんに生瀬勝久。印象に残りすぎる。ハマり役すぎる。その他にも菜々緒、宇梶剛士、橋本マナミ、笹野高史、前田敦子、勝地涼…。選出と起用所が絶妙でした。

…さんまさんどこにいた??


◆マスカレード×ミステリー

今作は『仮面を被ったお客様の中から、殺人事件の犯人を探せ!』という骨子のミステリ作品。原作ではどうだったのかわかりませんが、映画では《謎解き楽しむ》というよりも《理由付けを楽しむ》作品だったと思います。一癖も二癖もあるお客様が次々とトラブルを引き起こし、《ストーカー事案》を皮切りに、物語が静かに動き出す。過去の同種事案と、続発した同種事案が物語の革新に直結する。この点と点の繋げ方と、ドタバタと慌ただしい陽動の裏で静かに事件が急展開していく感じが東野作品っぽい。『真犯人とターゲットが意外な人物!』というよりは、『真犯人がターゲットを狙った動機』の方に唸ってしまう。本当に謎を残していた人、一人だけでしたし。声、若かったし。ターゲット、自分で死亡フラグ立ててたし。

あと印象的だったのは事象に対する理由付けですね。《手袋をしている》という事実に対して、その理由は《周囲に火傷を見せない為》なのか《ホテルに指紋を残さない為》なのか。もしかしたら《氷の魔力を隠す為》だったかもしれませんよね?